░Cracking░(🛸vs🚽)クラッキングとは、コンピュータネットワークに繋がれたシステムへ不正に侵入したり、コンピュータシステムを破壊・改竄するなど、コンピュータを不正に利用すること。 オンライン登録やシリアルチェックをスキップして使用するなど、悪用の目的でアプリケーションソフトウェアを改変する行為もクラッキングと呼ぶ。
(Wikipediaより引用)
ダイヤモンドシティ沖の無人島、とある天才科学者の研究所。
その一室……まあ客間なのだが……は薄暗く。
しかし静かかと思えばそうではない。
ばちばちと何かを弾く音。
ひゅら、ひゅんと何かを撫でる音。
響く音が尋常じゃないスピードで流れている。
薄緑のUIを白い指がひゅらひゅらと片付ける。
黄色く光るキーボードをえげつない速度で叩く指。
向かい合う二人が何をしているのか。
──チェスでも囲碁でも将棋でもない、それこそデータ上の演算勝負。
片や天才科学者Dr.クライゴア。
露出した肌部分はやや血管が浮き出ている。
天才たる頭脳をフル回転させている証拠だ。
片やIQ300の侵略者オービュロン。
大きな手故に不利かと思えば全く以てそうではない。
的確にプログラムを次々処理していく。
ばちんとクライゴアがエンターキーを弾いた。
オービュロンのUIにDANGERの文字。
しかして既に仕込んだマクロでそのまま送り返す。
このラリーが既に2時間は続いていた。
(よくもマア、疲れナイもんデアリマス)
モップがけを終わらせたマイクが、呆れた顔でその様子を見つめている。
どのタイミングで二人に飲み物を出そうかと考えて、しかし必要なさそうだと判断したまでだ。
エンドレスにチェックメイトを打ち続ける両者。
未だにキングの首を獲る気配は全く無い………のだが。
───ふと、音が止んだ。
妙な気配にマイクが気付いた矢先、どさりと倒れ込む二つ分の音。
「……ア」
直感的に、彼は冷蔵庫から冷却シートを取りに行く判断を下した。
「……二人してオーバーヒートしてンじゃネェデアリマス、バカ」
仲良く額に冷却シートを貼り付けて、ソファに座る天才二人。
両者のUIはクラックが済んだのか、ブルースクリーンが表示されていた。
引き分けである。
「ははは、すまんなマイク……このレベルで渡り合える者がいないものでな」
「ワタシもチョット熱くナッちゃいマシタ……すみまセン」
……やっぱり天才は何を考えているかさっぱりわからない。
また倒れられたら面倒だし、次から勝手に制限時間をつけてやろう。
マイクはブハァと溜息を吐いて、ラメの輝くアイスティーを差し出した。
〆