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    T_clocks

    @T_clocksのポイピクです。
    腐向けとかすけべも普通に載っけるぞ。
    よしなに。

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    T_clocks

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    死神バディもの。
    半分AIのべりすとで書きました。

    Tsulane / Majina (創作)「マジナ。今日"看取る"のはこの人」
    「おう。今回も頼むぜ、ツラネ」



    草木も眠る丑三つ時。
    さわりと優しくそよぐ風が、老人ホームのとある病室の開かれた窓から入ってくる。
    真っ白なベッドの上ですうすうと眠るのは、老齢の女性。

    その枕元に佇む、二人の青年。
    一人はその手に大きな鎌を持ち、もう一人は白い布を手にしている。


    ───死神だ。

    彼らは、死期を迎えた人間の魂を刈る者なのだ。
    そして今まさに、刈り取ろうとしていたのだけれど……。
    ふいに、白い布を持つ一人の青年──ツラネが口を開いた。


    「ねえ、マジナ」
    「どしたよ」
    「この人、確か親族がいたと思うんだ。
     娘さんらしき人が、家族と一緒に毎週お見舞いに来てたけど……」
    「……最近来なくなった、だろ」


    お前は優しいな、とマジナが困ったように笑う。
    どうやらツラネは、彼女の親族の安否も気にかけているようだった。

    だが、まずは目の前の仕事から。
    ツラネが、老婆の手をそっと握る。


    「……本当は、娘さんがいる時にお迎えしたかった。
     でも、ごめんなさい。今日が、期限なんです」


    老婆の手は、まだ仄かに温かい。……それでも、もうじき冷たくなっていくだろう。
    彼女はこれから死ぬというのに、穏やかな表情で眠っている。
    まるで、眠っていれば苦もなく逝けると知っているかのように。
    ツラネはそれを見、持っていた白い布を広げて老婆の顔にかける。
    すると不思議なことに、老婆の身体からふわりと白い魂が浮き上がり始めたではないか。


    ……これが、死の瞬間である。

    肉体から離れていく意識の中で、きっと多くの者が思うこと。
    "ああ、楽になった"と。
    苦しくない、痛くもない、怖くない。
    何故ならそれは、死んだ後のことだからだ。


    「嗚呼、綺麗な魂だ。
     んじゃ、次は俺様の仕事だな」


    黒いフードの奥で、マジナが優しく笑う。
    そのまま鎌を振り上げて──しかし彼は、動きを止めてしまった。

    理由は簡単だ。彼が持つ鎌の先端には、先程まであったはずの老婆の魂がないからである。


    代わりにいたのは、一羽の小鳥だけ。


    小鳥はすぐに飛び立ってしまうと、開け放たれていた窓の外へと消えていった。


    「……マジナ、あれって」
    「だろうな。ツラネ、どうやらお前と同じ思惑みてぇだぜ」


    マジナは鎌を仕舞い、小鳥の飛んだ方角を見る。そこには、暗闇に浮かぶ大きな満月があった。


    「だがよ、魂が護衛も無しに飛ぶのは危険だな」
    「うん。──"天使"に襲われかねない」


    ツラネの言葉に、マジナは小さく舌打ちをする。
    そうして二人は同時に踵をひとつ鳴らしたかと思うと、次の瞬間には何もなかったように、病室に静寂が訪れた。




    ───


    (ああ、ああ、あの子が心配だわ)


    小鳥の姿となった老婆の魂は、月明かりを受けながら一直線にとある場所へと飛んでいた。
    毎週かかさずお見舞いに来てくれていた、一人娘。
    シングルマザーとなってから、ずうっと大事に大事に育ててきた、愛しい一人娘。
    彼女も家庭を持ち、しかし老齢の身である自分を、彼女の夫や孫達共々気にかけてくれていた。

    そんな一人娘が、ある時から急にお見舞いに来なくなったのだ。
    老婆にはそれが心残り……即ち『未練』だった。


    (あの子の身に何かあったのかしら……)


    不安になりつつも、白い小鳥は娘夫婦の家へ近づく。
    家の中からは灯りが漏れているし、何より人の気配を感じる。
    ただ寝てしまっているだけなのか、それとも何かあったのか……。
    庭先に降りると、老婆は窓からリビングを覗く。


    (……)


    リビングは明るい。
    テレビはバラエティ番組を流している。
    そして、食卓に座る娘夫婦と子供達。
    老婆は安堵したが、はたと違和感を覚える。


    今は丑三つ時、すなわち午前二時。
    普通なら就寝時間だというのに、なぜ『家族団欒』の様相が眼前に───



    【来た 来た やっぱり来た】
    (えっ……)


    歪んだような、しかし神秘的な声が聞こえる。
    老婆が何かを察して、小さな羽を広げて飛び去ろうとするより早く、真っ白すぎる『手』が彼女を掴もうとして───


    「そこまでだぜ、"天使"」


    凛とした青年の声が響き渡ると同時に、老婆を捕まえようとしていた『手』がぼとりと斬り落とされる。
    見れば、黒いフードの死神……マジナが不敵に笑っていた。


    【何故 何故 邪魔するな】
    「邪魔するなだぁ まだ死んじゃあいない奴まで巻き込んで、何を言ってやがる」


    マジナが一歩踏み出すと、その足元から影が伸びる。
    その波紋は瞬く間に広がっていき、老婆の眼前──『手』があった空間を震わせた。



    老婆は驚愕した。
    空間が歪み、別の『手』が現れる。
    ……手。手。手。手。
    それは最早『手』の塊だった。
    『手』が靡き、『手』が翼のようにばさりと羽ばたく。



    「……これが"天使"です、おばあさん」


    そっと小鳥を抱え、ツラネが静かに言う。
    老婆は、元来知っている姿とは全く違う姿の"天使"に怯えすら見せていた。


    「"天使"ってぇと、魂を天国に導く慈愛の象徴なんて言われてるけどな──」
    【邪魔するな 邪魔するな 】


    マジナが言い終わる前に、"天使"は怒ったように叫ぶ。
    すると無数の『手』が二人を襲う。今度は老婆ではなく、マジナの方へと向かってくる
    しかしマジナは慌てもせず鎌を取り出し、ひゅんと一振り。
    たったそれだけで、襲いかかってくるはずの腕は切断され消えていった。
    次いで、マジナはその勢いのまま跳躍し、"天使"の頭上から鎌を振り下ろす。
    そのまま斬られるかと思われたが、寸でのところで"天使"はそれをかわす。


    「っははは、そりゃそのまま死にたかねぇよなぁ」
    【クキ°ィイイイ】


    マジナはそのまま着地し、ゆらりと鎌を構え直す。
    一方"天使"はというと、奇怪な悲鳴を上げながら逃げていった。
    それをマジナは追おうとはしない。
    彼の興味は、既に老婆へと移っているからだ。
    老婆は突然現れた二人の死神に驚いていたが、はっとしたかのように慌てふためく。


    (わ、私の娘が お願い、娘を、娘の家族を助けてあげて……)
    「落ち着いて、おばあさん……」


    ツラネがぱたぱたと暴れる小鳥を諌める隣で、マジナはリビングの窓をするりと通り抜けて部屋に入る。


    「……あのクソ"天使"」


    苦虫を噛み潰したような顔で悪態を吐くマジナ。
    無理もない。
    食卓についている娘家族は、まるで時でも止められたかのように微動だにしていなかった。
    唯一動いているのはテレビだけだが、バラエティ番組を流していたはずなのにいつの間にか砂嵐になっている。


    「おい、ツラネ。
     さっきのクソ"天使"、ばあさんの娘家族を『罠』に使いやがった」
    「だろう、ね。」


    マジナとツラネの会話に、老婆はまるでついていけていない。
    ただひとつ理解したのは、自分が知りえる"天使"の実物が、あまりにもおぞましいものだという事。


    「なあ、ばあさん。
    あんた、俺様達が何者か知ってるか?」


    不意に真剣味を帯びた声で訊かれ、老婆は少し考える素振りを見せた後、恐る恐ると口を開く。


    (……死神さん、よね。)
    「おう。」
    (もっと恐ろしい見た目かと思ったけれど、こんなにも優しい子達だなんて思わなかったわ……)


    そう語る老婆の声には、先程の恐怖の色など見られない。
    むしろ安堵感を覚えているようだ。


    「ちゃんと話を聞いてくれそうだ。
     心底安心したぜ」
    「うん。……おばあさん、今から大事な事を話します」


    小鳥を掌に乗せて、ツラネが話し始める。
    ツラネの声は、少し苦しそうだった。


    「……おばあさんのご家族は今、"天使"の力で『罠』にされてしまっています。
    あいつらは、魂を喰らう。
    特に、おばあさんのような美しい魂が大好物なんです」
    (っ、"天使"ってそういう存在だったの……)


    老婆の顔色が真っ青になる。
    その言葉が本当なら、自分はとんでもない化け物に狙われてしまったのだと言う事がわかる。
    同時に、己の知る"天使"とは違う事に動揺している様子だった。
    そんな彼女の心情を知ってか知らずか、ツラネは話を続ける。


    「おばあさんのご家族を助けるには、先程の"天使"をどうにかしなければなりません。
    そして、その"天使"を倒し切るには……繋がりの強い、貴方の魂の力が必要なんです。
    ごめんなさい、巻き込んでしまって」


    俯いたまま謝罪するツラネに対し、老婆は静かに首を横に振って答える。


    (いいえ、謝らないで頂戴。
    あの子が無事だとわかっただけで十分よ。
    それに、あの子と家族を助ける為なら喜んでお手伝いするわ)


    ふわりと笑みを浮かべた老婆を見て、二人はほっと息をつく。

    ────これで話は一段落ついた。後は"天使"だ。
    マジナが、先程"天使"から切り落とした『手』の一部を千切って、ふうっと息を吹き掛ける。


    「さあてクソ"天使"、追いかけっこの時間だぜ」


    マジナの吐息で浮いた『手』の欠片が、ぴいんと白い筋となって一直線に道を作る。
    "天使"の肉体は、分離して尚本体と強く繋がっているのだ。

    つまり、死神相手に"天使"の逃げ場は無いも同然。


    「ツラネ、ばあさんしっかり抱えとけよ」
    「わかった」


    マジナとツラネが、踵をとんと一度鳴らす。
    途端に白と黒の羽根を残して、姿が消えた。




    ───


    【邪魔された 邪魔された あと少しだったのに】


    ばさり、ばさりと『手』の翼を羽ばたかせ、"天使"が猛スピードで滑空する。
    純白の魂という『ご馳走』を、すんでのところで死神に横取りされた。
    歪な声はどこか苛立たしく聞こえた、が。


    【クキキキ だけど だけど あいつら絶対来る】


    "天使"は不気味に笑う。
    あの老婆の娘家族を『罠』にしたのだ、助ける為に自分の事を追いかけるだろう。
    黒い方の死神は無理だが、じゃあ白い方の死神なら
    老婆の魂を抱えているのは、間違いなくあっちだ。


    【白い 白い死神 あっちは弱い だから】
    「だから隙ありゃまとめて食ってやろうってか」
    【クキ°ィイ】


    耳元で聞こえた声に、"天使"は驚いて振り向く。
    するとそこには、ニヤリと笑う黒い死神──マジナがいた。


    「ほら、さっきの戦いの続きと行こうぜ」


    ひゅぱ、と振り抜かれた鎌が"天使"の『手』の翼を片方斬り落とす。
    バランスを崩した"天使"へ、更に追撃だ。
    くるんと宙返りをしながら、遠心力を利用して一気に薙ぎ払う。
    しかし"天使"はそれをギリギリ避けきったかと思うと、今度は反対の腕で殴りかかる。
    先程の戦闘より明らかに動きが良い。
    マジナがチッと舌打ちした。


    「───テメエ、道中で幾ら『喰いやがった』」
    【クキキキ 知らない 知らない だって皆 ただのエサ】


    ぶん、と腕を振り回し"天使"は再び距離を取る。
    どうも奴の言う通り、逃げる最中に他の人間達の魂を"喰って来た"らしい。


    「けっ、悪食がよ。
     "天使"なんて名前が勿体ねぇぜ」


    そんな軽口を叩きながら、マジナは内心訝しんでいた。
    この調子なら、負ける事はまず無い。
    だがどうも"天使"の動きがおかしい。
    まるで自分を煽って、隙を作ろうとしているような───


    「マジナ、後ろ」
    「ッ」


    ツラネの叫びと共に、マジナが咄嗟に鎌を背後へ振り抜いた。
    "天使"が放った『手』は鎌をすり抜けて、くぐもった鈍い音が響くと同時に、マジナの身体が大きく吹き飛ばされて木に衝突していた。


    「が───ッ」
    「マジナ」


    顔面から衝突したせいで、マジナが体勢を立て直すのに手間取る。
    一方で"天使"は、ゆらりとツラネに向き直った。


    【お前 お前 白い方だろ 弱いやつだろ】
    「………」


    瞬間、空気が微かに震える。
    マジナがゆっくりと立ち上がる。


    「……やめとけ、"天使"」
    【クキキキ 負け惜しみ 負け惜しみ
    お前は そこで 見てるだけ】
    「もう一回言う。やめとけ」


    マジナの言葉に、哀れみの色が混じる。
    しかし"天使"は聞く耳を持ちそうにない。


    【ご馳走 ご馳走 ありつける クキキキ】
    「…………………。」


    知らねえぞ。
    マジナがぼそりと呟いた。
    "天使"が無数の『手』をツラネに伸ばし───



    次の刹那、その全てが一瞬にして細切れになって地面に散らばっていた。
    ぴたりと、"天使"の動きが止まる。


    【く、クケ 】
    「……駄目ですよ。つまみ食いも、なにもかも」


    ツラネが口を開く。
    恐ろしいほど、静かな声色。
    あーあやっちまったな、とマジナが苦笑する。


    「おばあさん、すごく怒ってるんですよ」
    【な 何した 何した 】
    「自分だけならまだしも、自分の家族や、ましてや無関係な人達まで巻き込んだ事を」
    【黙れ 黙れ 何した おま え…………】


    "天使"の声が段々と小さくなる。
    まるで、怯える子供のように。

    ツラネが踏み出す。
    "天使"が後ずさる。

    一歩。
    もう一歩。

    そしてついに、"天使"が声にならない悲鳴を上げて逃げようとした。
    だがそれは叶わなかった。


    【が げ ッ】


    白い布が尖った槍のように変形し、"天使"の『手』を掻き分けて、まあるい心臓を貫いていたからだ。


    「……おばあさんの代わりに、ボクがお仕置きしてあげますね。大丈夫です、痛くはない筈なので」


    言い終わると同時、"天使"の全身に亀裂が入る。


    【や やだ きえたく ない】
    「駄目です」


    にこりと笑うツラネの顔は、氷よりも冷たい微笑だった。
    おーこわ、とマジナが肩を竦める。

    "天使"は嫌だ、助けて、と喚きながらばらばらに崩れていく。
    白い布が纏っている輝きは、老婆の魂の力───大事な一人娘を巻き込んだ事への『怒り』そのものだった。




    ───


    「はーぁ、じいちゃんに怒られちゃったな」
    「ふふ、しょうがないよ」


    おでこにお揃いのデコピン痕を拵えて、マジナとツラネが互いに笑う。

    あの後ツラネが娘家族へ『囁き』、朝方大急ぎで老婆の元へ向かわせたのだ。
    その際、……よっぽどでない限りしてはいけないのだが……マジナが老婆の魂を一時的に身体へ戻したのである。


    『最期に貴女達を護れてよかった』


    娘家族に囲まれて、老婆は今度こそ安らかに息を引き取った。
    ちなみに、"天使"に食われた人間の魂は無事に元の肉体へと返還された。


    「でもボク達、よくデコピンだけで済んだね」
    「ああー、なんでだと思う」


    ツラネが首を傾げると、マジナがくくっと笑った。


    「死神長(じいちゃん)、家族の情に弱ぇんだよ。
    説教してる声、潤んでたろあでっ」
    「あ、次の仕事だよマジナ」


    マジナの頭に直撃した小瓶の中には、小さな『仕事』の紙切れ。
    じいちゃん容赦ねぇぜ、とマジナが背筋を伸ばす。





    「………おやすみ、おばあさん」

    ツラネが空を仰いで、ふわりと笑う。
    爽やかに澄みきった、素敵な青空だった。

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