颯砂希という人間について。私は颯砂くんの真告白√を迎えてショックを受けた人間です。
そのうえでノーマル√も見て、ようやく彼を理解した気がする。
そんな話をしたいと思います。
颯砂くんって、すごく明るいイメージですよね。
もちろんそれも彼の一部なんですが、私が一番思う彼のイメージは【ある意味孤独な人】です。
言ってしまえば颯砂くんは「持ってる側」じゃないですか。
彼の善良な人間性を無視できるくらい、「持ってる」事は暴力的ですらある。
颯砂くんはその事実を小さい頃の失敗を通じて学び、現在の颯砂希になったわけですね。
そして、いろいろ学んだ颯砂くんでも、一生「持ってない側」のことは理解できないんじゃないでしょうか。「他者と違う」ということを把握はしてるんだろうけど、本質的には一生理解できない。
逆に「持ってない側」も颯砂くんのことは理解できない。
だから、どこか颯砂くんは浮いてる感じで、孤独な感じ。
一般的に持ってない側、やや持ってるけどそうでもない側の人間がほとんどなんだし。
小さい頃はそれを分かってなくて、周りから拒否されていた描写は見ていて辛いものがありましたね。颯砂くんはカンが良いから、それを感じ取って、ごくごく自然に普通のフリ・手加減みたいなのを覚えていったんだろうな。
現在、玲太くんと一紀くんと仲いいのって、2人とも基本性能がむちゃくちゃ高いからだと思ってます。陸上は除いた他の物事において、手加減をせずに渡り合えるのがその2人なんでしょう。
ちなみに主人公がゴッドハンドの超・スキンシップを颯砂くんに披露して「怖い」と言われたのにも持論があって。
普段ならカンの良さから素早く物事を理解できる彼をもってしても彼女の行動が理解できず、結果的に「怖い」という結論にいたったとのでは?と勝手に思ってます。可愛いね。
さて、私の持つ颯砂くんのイメージはこれくらいにして…。
真告白√を迎えてショックを受けた話です。
実はわたしは、たびたび彼が語る「自分は空気が読めない嫌なやつ」っていうのが違和感として残っていた人間です。自分の陸上を突き詰めたい人がそんなこと気にすんなよ…って。
さらに、「陸上をやめようと思ってた」というセリフ。
ガーーン!って感じで、マジで凄いショックだった。
キングオブアスリートを目指していると公言している人の口から、なんでそんなセリフが?だって颯砂くんは目標のためなら粘り強く努力して、辛さも飲み込んで上を目指せる人でしょ?って。
そういう部分を尊敬して大好きだったわたしには、彼がやめようと思ってたことは凄くショックで。私が見てきた颯砂くんって何だったのって…大げさに言うと裏切られた感?があったんですね。
あと、そんなに彼が辛いのに私は1ミリも気づけなくて、普通に最悪な女じゃんって思ったのもあったし。
だから颯砂くんの告白を受けて嬉しく思いつつも、「え、なんで辞めるまで思ったの?」「そんなこと思ってすら欲しくなかった」なんて、モヤモヤが残った。
勝手に好きになって勝手に裏切られたと思ってるんだからアホなんだけどさ…。
んでその後ノーマル√をやりました。
そこで初めて「あ、わたし全然颯砂くんのこと見てなかった。颯砂くんの看板だけみてたんだ」って気づきました。
それが颯砂くんの「高校生の颯砂希と、陸上をやる颯砂希を、はじめてきみが繋げてくれた(意訳です)」というセリフ。このセリフで、やっと私の中の颯砂希が像を結んだ感覚。それくらい衝撃的だった。
というのも、私が経験した仕事での壁と重なったんですね。
自分とリンクしたことで初めて、颯砂くんが抱えてた辛さが理解できたの。
ただの高校生として周りとワイワイやれる颯砂希と、陸上での天才ゆえに煙たがられる颯砂希。陸上に打ち込めば打ち込むほど自分自身を嫌いになる。
恵まれてるのに、感謝しなきゃいけないのに、そう出来ない自分すら嫌になる瞬間。
(彼が感謝という言葉をよく口にするのは、意識的なんじゃないかと思っている。)
【周りと上手くやれてる良い感じの自分】と【陸上に打ち込むほど煙たがられて嫌われてる自分】が別人のように剥離していく感覚。
自分で自分を嫌いになるのってしんどすぎませんか?
人間ってどこか良い人間でありたい欲求…みたいなのがあるじゃないですか。
自分自身が思う自分の像が良いものであればあるほど、陸上を通して嫌なヤツ像を押し付けられるのはむっちゃ苦しいよなぁ。
先ほど自分とリンクしたと書きましたが、それは仕事で初めてマネジメントをした時に経験した苦しみです。
きちんと仕事をしたいんだけれど、会社の前体制派の人間との摩擦でうまくいかない。今の会社の方針に合わせてマネジメントすればするほど反発されるし、反発されると私も強硬手段に出ることも多く、また他者にイライラすることも多く、こんな自分ってマジ嫌な奴…ていう悩み。
で、これが颯砂くんがいう「空気が読めない嫌な奴」ってことかぁ~…って初めて理解できました。マジで辛くて、病気しまくるし、ご飯も食べられなくなるし、最悪だった。
大人ですらそれくらい辛いのに、15歳の颯砂希にはどれほど辛かっただろうか。
それを、なーにが「そんなんで陸上止めるとかいうなよ」って非難したんだよ自分。
マジでクソ!!バーーカ!!
更に言うと、この「素の良い感じの自分と、周りから煙たがられて嫌な感じの自分を誰かが繋げてくれる」という感覚も、理解できたんですよね。
私が仕事で苦しみ抜いた時、それをしてくれたのが友達だったからです。
わたしの悩みを聞いた友達の、「あなたは嫌な奴なんかじゃないよ。そうやって悩むのは優しいからだよ」という言葉。それを聞いて、全て赦された感覚。
自分を嫌いにならなくていいんだと思えた時の安心感で、はちゃめちゃに号泣した記憶があります。
実際は、私が抱えている仕事での未熟点を無視した無責任なセリフ…と捉えることもできますが、時にはその他者の無責任さみたいなのに救われることがあるんですね。
ノーマル√はまさにそうだと思っていて、陸上部でない主人公であるがこそ、颯砂くんを赦し、救えた部分が多分にあるのではないでしょうか。
颯砂くんは主人公のことを女神だというし、それを受けて主人公は照れてるけど、たぶん想像以上に颯砂くんは主人公を女神視してると思う。
想像以上に彼は主人公のことを掛け替えのない存在だと認識してると思う…のが、実感として分かる。
小さい頃から他者と違うことで、恩恵を受けつつも孤独だった颯砂くん。
高校生になって初めて、自分をそのまんまドーンって受け止めて笑ってくれる人に出会えたんだね。
…とうことで、真告白√、ノーマル√の両方をして始めて、なんか颯砂くんの物語が分かったと思えたという話でした。真告白√で見えるのが選手・颯砂希なら、ノーマル√は生身の颯砂希。両方あって、颯砂希くんなんですね。
はぁ~~やっぱり、颯砂くんは凄いんだよなぁ。
嫌なやつなんかじゃない。真摯で真面目で、優しい人だよって、改めて彼に伝えたい。
若干無神経なとこも、人間味があっていいじゃないの。ねぇ。
颯砂くん、好きだー!