ひとつまみの信仰 その日は忙しかった。
部屋の掃除に、ギルドの予算会議、新しいメンバー数人の情報の把握、アプリバトルによるポータルの死守、食材や生活雑貨の買い出し。
特に予算会議は白熱した。先月余った額と合わせて、六三〇〇コイン。これを何に使うかで高校生たちのディベート合戦が幕を開けた。
貯めておくべきだと手堅い意見を出す者もいれば、たまには皆で外食でもと言い出す者もおり、ギルドマスターの意見はと周囲が視線を向ける中、サモナーは困ったように笑っていた。
「六三〇〇コインなら、我がデイトレードして、少ぉしだけ増やしてあげられるのであーる」
気だるそうな声が議論を遮り、サモナーたちをポカンとさせた。
Tシャツをまくり上げ、ボリボリと腹を掻きながら言うのはツァトグァだ。
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