赤い魔法を昼下がりに 踏切の隅に赤いものがチラチラと揺れているのを見かけて、列車が轟音で走り抜けていくのを横目にそれを眺めた。
風圧で大きく揺れる彼岸花が、オニワカの視界で踊っていた。
縁起でもない花だ。
第一印象はそうだった。
別名を死人花、捨子花と言って、彼岸花の気味の悪さを物語っているようだ。
特に、捨子花。
元の世界から一人、東京へと流れ着いてしまった赤子としては、眉をひそめたくなる名称だ。……まあ、花ごときに心乱れてやる義理もないが。
踏切の遮断器が上がる。
オニワカは歩き出さない。
揺れる彼岸花を見つめていた。
彼岸花にも花言葉はある。花なのだから当然だ。
誰が決めたかは知らないが、「あきらめ」だの「悲しい思い出」だのと、辛気臭い文言が並んでいるのを、鼻で笑った覚えがある。
1452