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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx・dcst・ユニオバ

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    ルノとアマ

    ・プレイ中の人間が書いてます。設定や関係性の齟齬が出ている可能性があります。

    たくさんお食べ、おおきな良い子ルノ+アマ


     闘技場での激戦を越え、三日。アーマリアは自身が言う通りよく食べた。大鍋いっぱいに作ったスープを吸い込むように食べ、焼いたパンは端から消えていく……解放軍が備蓄していた食料は矢の如き速さでどんどん彼女の腹に収まっていった。だからクロエが「買い出しに行きましょう」と言い出した時、みんなは安堵した。解放軍の料理番と自称する彼女の手には、アーマリアの食べる量を計算にくわえた計画表があったからだ。
     ところ変わって、バールバチモ。ルノーは街の真ん中で、さてどうしたものかと立ち尽くしていた。
     クロエに連れていかれた荷物持ちのレックスやホドリック、クライブやアデルの他は皆好きなように街に消えていった。ギャメルとマンドランはセレストに髪飾りを買いに。リディエルはアレインとトラヴィスを引きずってクロエへのプレゼントを買うのだと息巻いていた。オーシュはセルヴィやヤーナに連れられて古書店の方へ、ロルフとリーザは魔術トリオの護衛だと後ろをついて行った。魔術を使うあの三人と、弓を使うロルフやリーザは日々の戦闘でもアシストに回ることが多いからか、近頃は仲が良い。先日はオーシュが鍋いっぱいに作った料理を全員で車座になり粛々と食べていた。セルヴィが言うには「一言では言い表せない味がする」らしい。美味いのか不味いのかすら、誰も口にしなかった。
     グゥ〜……!
     飯の事を考えていたからか、腹が雄叫びを上げた。あまりの音の大きさにルノーはさっと腹を抑える。グゥ……と更に音は続く。どうやら音の出処は自身の腹からではないらしい。
    「ごめんね……アタイの腹の声……」
    振り向くと、大きな身体を縮こませ、アーマリアが恥ずかしそうにしていた。
    「アーマリア……。お前はモニカたちと服を買いに行くと言ってなかったか?」
    「サイズが無かったんだよ……。腹も減ったし、何か食べようと抜けさせて貰ったんだけど、どの席も満席でさ」
     満席で、と笑うアーマリアの片眉がへにゃりと下がった。街の人々が遠巻きにアーマリアを見ているところを見ると、彼女の巨体と見慣れぬ風貌に恐れをなした店員たちが角の立たないように入店を断ったのだろう。ルノーは小さくため息をつき、アーマリアに背を向ける。
    「来い。私も小腹が空いたところだ。何か食わせてやろう」
    「えっ!ほんと!」
     ぴょん、とアーマリアの肩が跳ねる。と、同時に彼女の腹から大きな音がする。グゥ〜!まるで返事みたいに。
    「……あっ」
    「……」
    「……小腹じゃ、そのぅ……すまないかも?」
    「ふ、ふっふふ……ははは!」
    「わ、笑わないでくれよ!」
    「はは、すまない、はは!まさか腹まで返事をするとはな」
    「仕方ないじゃないか……!」
    「いや、元気で結構。良いだろう。お前とお前の腹が満足するまで食わせてやろう」
    「……二言は無いね?」

     宿屋の一階にある食堂は解放軍の馴染みの店で、昼日中からビールのジョッキをいっぺんに4つも運ぶ女将はアーマリアを見ても大して驚きはしなかった。
    「はいよ!二名様ね。そこの窓際の隅が空いてるからそこで頼むよ!」
     気風の良い声で案内された席は二人掛けの小さなテーブルで、アーマリアどころかルノーでさえ手狭な席だ。
    「いや、女将。そちらの四人掛けで」
    「おニイさん、混んでるのが見えない?二人は二人。それともアンタの尻は一人分の椅子に収まんないくらいデッカいってぇの!」
     アーマリアが「なにを」と言いかけて、ルノーが制す。女将は悪い人ではないのだ、口が悪くて威勢が良いだけで、面倒見も良ければ話も通じる。
    「私の尻は一人分で済む。が、空いた椅子にはテーブルに置ききれない料理を置く予定でね」
    「大きい口叩くじゃないか!そんなら料理もがっぽがっぽ食ってくれそうだ。いいよ、そっちのデカい席に座んな、お大尽」
    「ああ」
     ルノーが肩をすくめてアーマリアに目線をおくると、アーマリアのほうはきょとんと目を丸くしていた。そのまま二人で騒がしい店内を進み、店の奥にある六人掛けに座る。
    「さて、啖呵を切った手前お前にはせめてこのテーブル一枚分くらいは食って貰わんとな」
    「いいの……?」
    「何が良い?ここは揚げ物が美味いのだ。アーマリア、嫌いなものは?」
    「えっと……ない……」
    「お兄さん、何頼むの!」
    「とりあえず、おすすめの品を適当に」
    「山盛りね!」
    「ああ、山盛りで」
     アーマリアはルノーと女将が軽快にやり取りするのを見ながら、不思議そうにしている。ルノーは彼女の目線に気が付いて、女将が運んできたビールを差し出しながら聞いてみる。
    「何か、気になるか」
    「ええっと……あんたが解放軍にいる時より明るくて、びっくりしてる」
    「ふふ、暗いか?いつもの私は」
    「そういうんじゃないんだよ!……ただ、いつもオトナって感じしてるだろ。あんた……ルノーは貴族なんだって?それ聞いてさ、アタイ、確かになあって思ったんだよ。こういう大衆食堂よりお高いレストランでお上品に食べてそうっていうか」
    「昨日、共にレックスの焼いたパンを食べたのに、か?」
    「あのカチカチパン!アタイ歯が折れるかって思った!でも、クロエの作ったスープに浸して食うと美味かったねえ」
    「レックスが喜んでいたな……あまり、甘やかさないでくれ」
     会話が進むにつれ、アーマリアの顔色が明るくなっていく。街で出会った時は緊張からか表情も強ばっていたが、今では大口を開けて大笑いをし、身振り手振りを交えてルノーに解放軍に入ってからのあれこれを話してくれる。生来、明るい人なのだろう。ルノーは頷き、聞き続ける。やがて料理が運ばれてきた。注文通りどれも山盛りだ。山になったポテト、丘を思わせるオムライス、塔のように積まれたガレット……。
    「美味いっ!本当だ!アタイこんなに美味しいポテトフライ、初めて食べた!ふっくらしてるのに外はカリッとしてて、ちっともべとべとしてない」
    「そうか、もっと食べるのだ。ほら、これも」
    「わ、わ……ふわふわで……熱……美味しい!」
     山はあっというまに平野に変わった!女将が皿を持ってくるより早く、アーマリアは料理を腹に収めていく。それも粗雑に食べ散らかすのではなく、スプーンやパンを使って上手にソースの一滴すら残さず食べるものだから、女将も嬉しそうに「美味しいかい、そうかい!」と、他の客そっちのけで皿を持ってくる。
    「はふ、はぐ……ん、ルノー……」
    「どうした?」
    「連れてきてくれて、ありがとう……へへ」
    「……ああ」
     アーマリアが皿の向こうで笑った。頬っぺたは薔薇色に染まって、少しだけ照れているようだった。
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    ナンデ

    DOODLEアレルノ 通常END後
    貴方の為に生まれた、これは運命 生まれは変えられない。ルノーは自分の生まれた家柄にも、立場にも何の不満も有りはしなかったが、それでも自分の生まれからくる宿命と憧れからくる仄かな夢とを天秤にかけて、夢を諦めたことがある。
    「ルノー、ありがとう。俺を信じてくれて……」
     戴冠式が終わって、夜。熱気の冷めない城下町と違って、グランコリヌの城にあるアレインの部屋にはしんとした夜の空気が満ち満ちていた。ルノーはベッドに腰掛けるアレインの頂きに窓から差し込む月明かりが反射して、天然の王冠のような煌めく輪があるのを、立ち尽くしたまま、見ていた。
    「アレイン陛下……」
     アレインの部屋、とは、呼ばれの通り、彼の自室であった。急遽運び込まれたキングサイズの天蓋付きのベッド以外は、アレインがこの城から去った日のまま、子どもサイズの椅子や、勉強机などが放置されていた。埃は、積もってなかったのだと言う。何も減ったり、増えたりしても居なかったらしい。それはガレリウスの中にいたイレニアが、存在を奪われて尚、最愛の息子の帰る場所を護り続けたのか、それともガレリウスがグランコリヌ城自体にはなんの執着もなく、維持を侍女たちに任せきりにしていたのか。今となっては、もう知る術もない。ガレリウスはアレインが討ち倒し、その過程でイレニアは魂だけではなく、姿形をもこの世から失くした。
    1878

    ナンデ

    DOODLE手放したことなんてなかったよ

    前世記憶有り・現代世界転生・年齢逆転のアレルノ
    呟いたものをふわっと小説にしたふわっとした小話なのでふわっと読んでください。ふわふわ。
    千年隣に居させて欲しい、貴方の蒼と魂の ルノーの未練は永くアレインを独りにしたことだった。未練は後悔と混ざりあって執念に変わる。生きていた頃と同じように、ルノーの魂は熱く燃えて、魔法ではなく科学が蔓延り、馬ではなく低燃費軽自動車が走り回る世界に生まれる時に「今度こそ、あの方を置いていきたくない」と大層踏ん張った。その結果が、これだ。
    「ルノー……久しぶり」
    「陛下……」
    「はは、良かった。覚えていてくれたんだな。……もう陛下じゃないし、殿下でもないけど」
     いたずらっ子のように微笑む、かつての恋人は見るからに上等のスーツを着ていた。薄青のシャツに、あの紋章を思わせる濃い青のネクタイをしめている。目元には少し皺が寄っていた。慣れた着こなしと落ち着いた表情は、大人の男そのものだった。問題は、ルノーが着ているのが学生服だと言うことだ。県内でも有数の進学校の創立当初から変わらないレトロな学ランに、夏休み明けに新調したスニーカー。抱えているのは教科書が詰まったナイロンリュックで、これは高校入学の祝いに祖父母に買って貰ってから一年半と少し、大事に使っているものだった。
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