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    カナモリ

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    🔥🎴を買いますが、閲覧は雑食。地雷は自分で避けます。成人済み

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    カナモリ

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    謎軸🔥🎴。探偵してる?🔥さんと、同居してる🎴くんの話の進捗。

    探偵のやつ お酒と香水の匂いに包まれ、ソファに座って眠る煉獄を見つめ、炭治郎はため息をついた。
     カーテンと窓を開けると秋のひやりとした空気が流れ込んでくる。
     冷蔵庫からレモンを取り出してスライスする。マグカップにレモン汁と蜂蜜、熱湯を加えて混ぜると、柑橘の爽やかな香りが広がる。
     スライスしたレモンを浮かべ、煉獄の前のデスクに置く。
     煉獄の定位置であるチェスターフィールドソファは、ゆったりとした作りで触り心地が良いけれど、寝るには向いていないのにと思った。
     背もたれに深くもたれ、長い脚を組み、朝日に照らされて頬に長いまつ毛の影を落としている姿は彫刻のようだ。
     アンティークに囲まれた重厚感ある部屋の中でも、煉獄の姿形は一際美しく荘厳だ。
     「起きてください。朝ですよ」
      炭治郎の声に、瞼がほんの少し持ち上がり瞳が僅かに振れる。それだけでしっかりと覚醒するのだ、この男は。
     「レモン湯、作ったから飲んでください。二日酔いにいいですよ」
     「ありがとう」
     そう言ってカップを手にして慎重にレモン湯を口にする。
     猫舌ではないけれど、寝起きには少し熱すぎる温度だと思う。
     だけど、飲みやすい温度だと、さっさとシャワーん浴びに行ってしまうので、炭治郎はこの時ばかりは気が利かないふりをする。

     ゆっくりとレモン湯を飲み終えた煉獄がシャワーを浴びている間に、炭治郎は朝食の用意をする。
     生ベーコンと目玉焼きを焼いている間にパンをトーストし、サラダとコーヒーを用意する。
     テーブルのセッティングが終わる頃、シャワーん終えた煉獄がやってくるので揃って食卓につく。

     炭治郎と煉獄が2人で生活を始めて約一年半。
     煉獄はだんだんと夜に不在がちになっていたが、どんなに遅くなっても朝食だけは必ず一緒に摂った。
     たとえ酷い二日酔いの煉獄が、レモン湯しか飲めない日でもテーブルには着く。

     今日も、深夜に女性の運転する車から降りた煉獄は、寝室ではなく仕事場のソファで眠りについた。
     いくら触り心地が良くても、きちんとベッドで寝なければ疲れが取れないだろうと炭治郎は心配している。
     だけど、煉獄がベッドで眠らなくなったきっかけを思うと複雑な思いになった。

     そもそも、炭治郎と煉獄は家族ではない。
     炭治郎が9歳、妹の禰󠄀豆子が8歳の時、他の家族が事故で亡くなった。
     身寄りのない2人を、篤志家である煉獄の両親が引き取ってくれ、それから家族同然に過ごしていた。
     辛い時期に支えてくれた煉獄に、炭治郎はすぐに懐いた。
     そして、幼すぎて気付かなかったが、朧げな恋心を抱いた。
     境遇の為か、煉獄家の人間は皆、炭治郎と禰󠄀豆子を丁寧に尊重し愛情を注いでくれたが、煉獄は特に炭治郎に対して過保護に扱った。
     長男なのでしっかりしなければという想いが強く炭治郎だが、煉獄にそう扱われるのは心地良かった。
     2人は仲良く、親密に過ごしていた。

     転機があったのは一年半ほど前のことだ。
     元々体の強くない煉獄の母、瑠火の療養の為に引越しをする事になった。

     しかし、煉獄家は色々な事業を行っていたので、それを継続する為、煉獄だけは生家に残る事になったのだ。
     炭治郎は16歳。まだ未成年なので当然連れていくと言われていたが、どうしても煉獄の側にいたかった。
     何とか残りたいとお願いすると、煉獄もそうするといいと後押してくれた。
     煉獄の両親も、転校はせるのも忍びないと了承してくれた。

     しかし、煉獄が引き継いだ家業は、数ある中でも一番重要そうではない探偵業だった。
     宣伝などは一切行っていないのに、不思議と仕事の依頼が舞い込んでくる。
     報酬の話などは一切聞かないので、稼ぎになっているかも怪しいが、彼がやりたい仕事なら、ゆくゆく自分が養いたいと密かに考えていた。

     ある日、深夜に仕事を終えた煉獄に先に寝るようにと言われていたのでベッドで煉獄の帰りを待っていたら、酷く酔った煉獄がベッドに入ってきた。

     同じベッドで眠ることなんて、小さな時以来なので炭治郎は緊張で眠れなかった。
     ぎゅうぎゅうに抱き込まれて、煉獄の匂いに包まれて眠れるわけがなかった。
     だけど煉獄の心音が聞こえる腕の中は、この世で一番素晴らしい場所に間違いない。

     朝になり、煉獄が目覚めると、腕の中の炭治郎を見つけて目を丸くして凍りついた。
     その様子に、幸せだった気分はたちまち萎む。
     
     間違えた、悪い。とか、寒かったから、子供の体温に釣られたのかもしれない。だの散々言い訳じみた言葉を浴びて、誰と間違えたんだとか、子供扱いしてほしくないと傷ついた。

     それから開き直ったのか、夜遊びをしているのを隠さなくなって深夜や早朝に帰ってくることソファで眠るようになった。
     それを寂しいと思うと同時に、煉獄と関係を持ったであろう女性を羨んだ。
     煉獄を自宅に送り届けてくれる女性や、煉獄に頼まれて荷物を届けに行った店にいる女性は、皆華やかで美しい。
     世馴れた婀娜っぽい雰囲気に、夜の店での活躍を感じさせる。
     炭治郎は女性の商売に偏見はなかったが、煉獄がそういった店に入り浸っているという事実に、少なからず胸を傷めた。
     煉獄は見目麗しく男ぶりも良いので、きっとそういう店でも好かれるだろう。
     実際、何人かの女性と親しげにしているのを見かけ、誰でもいいなら俺でもいいんじゃないかと思ってしまう。
     だけど、煉獄は決して炭治郎のことをそういった目で見ない。
     それはそうだ。煉獄は、男を奮い立たすような容姿も魅力も持ち合わせていない子供相手に、そんな気を起こすような酔狂な男ではないんだ――と、何度も自分に言い聞かせた。
     自虐的になり、「俺も高校卒業したら、夜のお店行ってみたいなぁ」と言った時、「ダメだ」とにべもなく切って捨てられた。
     きっと、彼の中では今後何年経っても自分は子供のままで、まして恋愛対象になんて見てもらえないんだろう。
     あと数ヶ月で高校を卒業する炭治郎は、その後の身の振り方を煉獄に相談できずにいた。
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