放課後。学校からの帰り道、きり丸たちと別れた乱太郎は家へと向かっていた。
乱太郎の両親は共働きで忙しいので家に帰ったら少し家のお手伝いでもしようかと思っていた。
その途中、道でしゃがみこみ鞄のなかを漁る人を見かけた。探し物をしているようだった。
高校の指定鞄を持っていたので高校生で先程からどうしようと嘆いていた。
(なんだろ…お兄さん困ってるなあ、どうしよ…うーん)
普通の人はここは素通りするが、よし、と決意して乱太郎は思いきって声をかけた。
「あのー、どうしたんですか?」
「!えーっと、ちょっと、探し物をしてて、鞄に入れたはずなんだけど」
急に声をかけられたせいかその人はびっくりした顔をしていたが、言葉を返した。
「ちなみに何を探してるんですか?」
「家の鍵。ないと家に入れなくて。夜まで兄ちゃん帰って来ないから」
その人はスマホを持っているが今日は寝坊をしてあろうことか充電し忘れたらしく、友人に連絡しようにも出来ないらしい。
「良かったら、私も探しましょうか」
「え、いいよ。君、帰る途中だったんでしょ?僕のことなんか気にしないで…」
「でも、お兄さん困ってるでしょ?それに二人で探したほうが早く見つかると思いますけど」
困ってる人を見ると放っておけなくなる乱太郎は引き下がらない。その人は申し訳そうに、
「う…ごめんね。お願いしてもいいかな?」
そう言うと乱太郎ははい!と元気よく答えた。
その人はいつも家の鍵は鞄に入れていたのに、家に着いてから無いことに気づいたらしい。
「朝はちゃんと家の鍵閉めたし、絶対鞄のなかにあるはずなんだけど」
その人の通学路を辿って鍵を探す二人。あれから数時間たったが見つからない。
乱太郎は私も同じ鍵を失くしたことあるなあと考えていた。
あの時は私も鍵を落としたとおもったけどそういえば、と乱太郎はその人に話した。
「こういう時って大抵ポッケに入ってたりしますけど、確認しました?」
「……あ!」
ブレザーのポッケに手を入れるとあったらしい。
今日は寝坊もしていたし、いつもの場所とは違うところに入れていたかもしれない、と反省してごめん、と乱太郎に謝った。気にしないでください、と乱太郎は笑顔で言った。
「本当にありがとう。助かったよ、君、えっと」
両親や先生に知らない人には名前を教えてはいけないと言われていたが、この人は悪い人ではないと思い、乱太郎は教えた。
「私、猪名寺乱太郎って言います。お兄さんは?」
「僕は小松田秀作って言います。乱太郎くん、て呼んで良い?」
「…はい、小松田さん」
今度会うときにお礼がしたいので連絡先を教えて欲しい、とお願いされたのでランドセルから紙とペンを出して紙に書き、小松田に渡すと乱太郎は挨拶したあと家へと戻っていった。
乱太郎を笑顔で手を振って見送る小松田は見えなくなると一人呟いた。
「やっと、君に会えた」
乱太郎は前世の記憶がないらしい。
そのせいか乱太郎は小松田の顔をみても何も言わなかった。本当に覚えてない様子で。
でも乱太郎は前世と変わらず「乱太郎」だった。優しくて、困った人を見たら放っておかない子。
乱太郎のそういうところが小松田は惹かれていて、好きになったところだ。
(現代こそ、君と結ばれたいなぁ)
家に帰ったら早速乱太郎に連絡しないと。小松田は足早に家へと向かった。