禁断の選択 モンスターと人間との仲を取り持つ大使になって欲しいとアズゴアに頼まれ、フリスクは喜んで引き受けた。
これまでずっとバリアによって地底に閉じ込められていたモンスター達を地上に解放したはいいが、現実はそう甘くはなかった。
許可なく勝手にバリアを壊したのが原因で、モンスターとの共存を否定するものがあまりにも多かったから…。
モンスターと人間が一緒にいる、ましてや恋人として付き合うことはご法度だった。
それでもサンズとフリスクは惹かれ合い、お互い求めあう気持ちが強くなるだけだった。
「受け入れてもらうにはかなり時間がかかりそうだね…」
「地上じゃ、オイラ達が来るまでモンスターがいない生活が当たり前だったからな」
いきなりモンスターと共存なんて言われても受け入れるわけもなく、大多数の人には理解されないことはわかっていた…が、この想いは誰にも止められなかった。
この景色を見せたくて、サンズと共に生きたくてバリアを壊したんだ。
人間相手にどう説得するか、納得してもらえるか、モンスターが人間に危害を加えない存在だと証明がない限り地上で暮らす権利を得るのは難しいだろう。
「政府のお偉いさん方はなんて言ったんだ?」
「いくら言葉で説明しても最初から話を聞こうとすらしなくて、耳を貸そうともしなかったの」
「得体の知らないものは誰だった恐ろしいものさ」
「存在が分からないから、知らないから警戒する、知ろうとしない、知るのが怖いから、だからこそ知る知識が必要だと思うのに…」
「フリスク、オイラはいくらでも待つさ。みんなもフリスクを信じて待ち続けるさ。オイラはアンタを応援してるぜ」
明日フリスクは居なくなる。
もしかしたら二度と会えない可能性だってある。そうと分かれば2人の求め合う気持ちがより強く、決意が漲った―。
「………………フリスク、念の為に確認したいんだが、本当にいいんだな…?後で本当はやりたくなんかなかった、なんてのはナシだぜ……?」
フリスクはそっ…とサンズのパーカーの袖口を掴む。
「………サンズ……今夜だけ、人間とかモンスターとか忘れて欲しいの……ただのサンズでいて、
私を、サンズの事が好きなただのフリスクでいさせて──」
モンスターと人間ではなく、恋に溺れた
ただの彼氏と彼女で──
気づいた時には天井を見上げていた。
押し倒された時に感じた雄の本能
モンスターといえど、サンズも男だということを改めて認識する。
サンズの眼光が一瞬鋭く光ったその光景はとても美しいと感じた。
片方の手で頬を撫で下ろし、手を重ねて
お互い見つめ合い、口付けを交わす。
満たされると同時に背徳感が襲う。
これは間違ったことなのかもしれない…
上手くいかなかったらモンスター達はまた閉じ込められてしまうかもしれない。最悪、殺されてしまう可能性だってある……。
モンスターが安全な生き物であることを証明する為に明日裁判が行われる。
お互いの気持ちを抑えきれず
お互いの体温が
お互いの舌が
お互いの愛が
気持ちだけではなく、身体も一緒に重なり合う―。
人間を愛したことがサンズの罪なら
モンスターを愛したことがフリスクの罪なら
一緒に罰を受けよう
正しさよりこの腕が欲しい、愛しい人の全てが欲しい。
涙が頬を濡らす、幸せを噛み締める涙
愛し合うことが禁忌なら
愛し合ったことが2人の罪なら
堕ちるだけ堕ちよう
戻れない深みまで───。