おにろりからのおねろりとは恐れ入ったヒムとキズナの結婚式が行われた。参列者は二人だけ。
教会の中は静寂に包まれており、ステンドグラスから差し込む光が幻想的な雰囲気を作り出している。
祭壇の前に立つ新郎・ヒム。
純白のウエディングドレスに身を包む花嫁・キズナ。
二人が向かい合い、口づけを交わす。
「汝、ヒムはキズナのことを生涯かけて愛することを誓うか?」
「はい、誓います」
「ではキズナ、汝はヒムのことを生涯かけて愛する事を誓うか?」
「はい、誓います」
「よろしい。では指輪の交換を行う」
牧師の言葉に従い、ヒムとキズナは互いの指にリングを嵌めた。
「この婚姻によって夫婦となった二人の上に神の祝福がありますように」
その後、写真撮影を行い、式は無事終了した。
ヒムはキズナを連れて自宅へと帰った。
「ただいま、アルビナス」
「おかえりなさい。あら、その子は?」
「紹介するよ。俺の妻になったキズナだ」
「はじめまして。ヒムの奥さんになりました」
「は……?何言ってるんです?冗談はやめてください」
「冗談じゃない。本当だよ」
「その子はまだ小学生ぐらいでは?まさか犯罪に手を染めるなんて……」
「違うって!俺はロリコンなんかじゃ無い!好きになった相手がたまたま小さかっただっただけだ!」
「それを世間一般ではロリコンと呼ぶのですよ」
「くっ……まあそれはいい。それより大事な話があるんだ」
ヒムはキズナとの関係を説明した。
「そう……おめでとうございます。でもあなたたちの年齢だと籍を入れることはできないのでは?」
「そこは大丈夫だ。ちゃんと手を打ってある」
ヒムは懐から一枚の紙を取り出した。
「これは?」
「養子縁組届だ。これがあれば俺たち二人は家族になれる」
「なるほど、つまり養子になって私たちの家族になるという訳ですね」
「そういうことだ」
「わかりました。手続きをしておきましょう」
こうしてヒムとキズナは本当の親子になることができた。
「よし今日はパーティーだ!盛大に祝おう!」
「わーい!」
「まったく……現金な人たちですねぇ……」
こうしてヒムたちは幸せな時間を過ごした。
**
「ねえ、ヒム……私たち結婚したけど養子になるわけだし……外を歩く時はお父さんって呼んだほうがいい?」
「うーん、確かにその方がいいかもしれないな。今度からは外で会う時は父さんって呼んでくれ。家の中では今まで通り呼べば良いさ」
「うん、わかったよ。パパ♡」
「おい、なんだ急に!?」
「えへへ……なんとなく……呼びたくなっちゃったの……だめ?」
「別に構わないが……」
(かわいいなぁ)
**
「ところで子供は何人欲しいのですか?私は三人は欲しかったのですが……」
「アルビナス……お前なぁ……」
「ふぇ?なにか変なこと言いました?」
「いや、なんでもないよ」
「そうですか。それで何人ほしいんですか?やっぱり男の子と女の子が一人ずつでしょうか?それともう一人女の子も欲しいですよね?あとそれから……」
「ストップストーップ!キズナはまだそんな話できる歳じゃねえよ」
「残念です」
「まあまあ、そのうちな」
「ただいまー!♪」
元気よくドアを開けたキズナは入ってくるなりアルビナスに飛びついた。
「きゃっ!いきなりどうしたんですか」
「だってアルビナスに会えたのが嬉しくてしょうがないんだもん。アルビナス大好き!」
「もう、甘えん坊ですね……私も好きですよ」
「やったー!」
「可愛い子」
アルビナスはキズナを抱きしめ返した。
「あの……キズナ、そろそろいいか?」
ヒムの声を聞いたキズナの顔から表情が消える。
「ヒムいたの……?」
「ああ、最初からずっといるぞ」
「ごめんね、気がつかなくて。ヒムは存在感が無いから」
「いや、そこまで言うことないだろ」
「何か言った?」
「いや何も」
「そう。よかった」
キズナは再び笑顔に戻った。
「それじゃあ、ご飯にしましょうか。今日は私が作りますね」「やったー!楽しみ!」
アルビナスが台所に立つと、キズナが手伝いを申し出た。
「私にも手伝わせて」
「いいですよ。では野菜を洗ってください」
「任せて」
キズナが水洗いをしていると、アルビナスが声をかけた。
「ちょっと待って下さい」
「なに?どうかした?」
「いえ、何でもありません。続けてください」
アルビナスはキズナの首筋に手を当てた。「ひゃあっ!」
「動かないでください。すぐ終わりますから」
「う……うん……?」
アルビナスの手には小さな針が握られていた。そして彼女の目つきが変わる。まるで獲物を狙う蛇のように。
アルビナスは素早く針を突き刺す。するとキズナの目から光が消え、その場に崩れ落ちた。
「ふう……これで良し」
アルビナスはキズナを抱きかかえると、そのまま部屋を出ていった。
**
「うぅ……ここは……どこ?」
キズナが目を覚ましたのは薄暗い地下室のような場所だった。
「あら、お目覚めですか?」
「アルビナス!無事だったんだね!」
「ええ、おかげさまで。ところであなたに聞きたいことがあるのですが……」
「なに?」
「どうしてヒムと結婚したのですか?」
「ヒムは私の運命を変えてくれたから。だから好きになったの」
「運命を変えた……ですか。具体的にどんな風に変えられたんでしょう?」
「それは……」キズナの目に一瞬影が差した。
「言えない……かな」
「そうですか……なら仕方ありませんね」アルビナスはキズナに近づいていく。
「あなたはヒムが好きなんですね?」
「うん、大好きだよ」
「その気持ちを、もっとヒムに伝えたことはありますか?」
「うーん……あんまり無いかも。恥ずかしいし……」
「なるほど、わかりました。では……」
「なにをする気?」
キズナは身構える。しかし、すぐに異変に気付いた。体が痺れて動けなくなっているのだ。
「これは……麻痺毒!?いつの間に……」
「大丈夫ですよ。死に至るような猛毒性のものではないですから。少しの間、体の自由を奪うだけです」
「一体どういうつもり!?」
「ヒムにあなたのことを愛してもらうんですよ」
「えっ……」
「ヒムはもうじきここにやってきます。それまでにたっぷり可愛がってもらいなさい」
アルビナスはキズナをベッドの上に寝かせると、その上に覆い被さった。
*
* * *
その頃、ヒムは自宅に向かって歩いていた。
「いや〜まさかアルビナスがあんなに子どもを持つことに積極的だとはなぁ。まあ、俺としては嬉しいけどな」
そんなことを考えているうちに、彼は家に到着した。
「ただいまー」
返事はない。おかしいなと思いつつ、リビングに入ると……。
そこには裸で絡み合うアルビナスとキズナの姿があった。
「なっ……!?おい!何をしている!!」
「おかえり、パパ♡」
「何が『パパ』だ!離れろ!」
「嫌です」
「ふざけんじゃねえ!早くキズナから離れろ!」
「どうしたんですか?そんなに慌てて」
「うるせぇ!とにかく今すぐそこをどけ!」
「いいじゃないですか。家族仲良くするのは良いことでしょう?」
「あんたは黙ってろ!キズナも抵抗しろよ!」
「ふわあ……眠くなって来ちゃった……おやすみ」
「キズナーッ!!!」
その後、アルビナスはヒムによってこっぴどく叱られたという。
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう!委員長よ♪ 次回はいよいよこの小説の完結編になる予定らしいから、最後までちゃんと読んでね! それじゃあ、今日はこの辺で!また会いましょうね!ばいばいっ!…………ところで作者さん?これ本当に最終回なのよね? なんかまだ続きそうな終わり方だったんだけど? え?マジな話?本当なの? ちょっとぉ!! うそつきぃいいいいいい!!!!」