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    zyogasaki_

    @zyogasaki_のやましい落書き入れ。

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    zyogasaki_

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    冬毛でもこもこむちむちの布九尾の話

    「きゅうん、くん……」
    「よしよし……」
     猫なで声を出している九尾は、腹を上に向け、国広に擦り寄って甘えている。胡座をかいた脚の間に収まっている姿を見ると子犬のようで、いつか国広よりも大きく育つのかと思うと寂しいものがある。
     まだ変化(へんげ)に慣れない彼は、こうして眠る前は元の姿に戻ることも多い。この姿に戻った彼を愛でるのは日課のようなものだ。

     ――成体でないとはいえ、あの気高い九尾がここまで自分に懐くと国広は思っていなかった。
     ただ一晩、飯をやって助けただけだがこうしてずっと傍に居る。
     人間の姿は弟の様で愛おしく、獣の姿は小さく愛らしい。そんな彼に好かれるのだから悪い気はしない。
     それに加えて彼は可愛らしいだけでなく、九尾としての力も強く、頼りになる。
     もう国広は彼無しの旅は考えられなくなっていた。
    ――ちりん
    「ふふ、この鈴つけて正解だったな。可愛らしいし、何より何処にいるか分かって安心する」
     彼に買ってやった首の鈴が鳴る。
     国広が贈った飾り紐に括り付けられているそれは、逸れないようにと町で買ったものだ。動く度にちりん、ちりんと鳴らす姿は猫のようで微笑ましい。
     飾り紐は国広がそれなりに愛用していたこともあり、使い古されている。新しくて綺麗なものの方が良いのではと提案したが断られた。すっかり気に入られているようだった。
    「……そろそろ寝ようか」
     国広はひとしきり彼を撫でると、抱き上げて床へ向かう。
     今日は少し良い宿を取ったおかげで、野宿ではない。
     最近は彼のおかげで野宿であろうとも、あたたかく心地の良い寝床で眠ることができるが、やはり布団というのは疲れが取れる。
    「くう……」
     布団へ入り、また腹を撫でてやると、彼はまた甘えるような声で鳴いた。
     その腹は柔らかく、最近は寒くなってきたからか毛量も増え、腹自体も脂肪を蓄え太くなった気がする。
     思わず触り心地の良さにこうして撫でてしまうのだ。
     そうしているとぼふん、と聞き慣れた音が聞こえ布団を占める質量が増える。
    「……あんたは随分獣の俺を気に入ってるようだな」
    「……どちらも気に入っているぞ、俺の姿を真似てくれたのも嬉しかった」
     突然人の姿に変化した彼は、そうか、と呟く。
    「それじゃあ今日はこの姿で寝ても良いか?」
    「構わないぞ、最近はこっちの姿も肉付きが良くて気持ち良いしな」
     国広はそう言って彼を抱きしめる。
     国広よりも細身に見えた彼は、獣の姿に引きずられているのか少しふくよかになったように感じる。
    「あんたが気に入ったなら良かった」
     そう言いながら彼は腕を絡ませてくる。人の姿の彼もあたたかく、心地が良い。
    「その姿のお前と共に寝るのは初めてだな」
    「ああ、こうして言葉を交わしながら眠るというのも良いな……」
     街に行く時以外は獣の姿をしている彼は、こうして国広と話せるのが嬉しいようだった。
    「俺もお前と話せるのは楽しい、今まで話をしてくれる相方など居なかったからな」
    「……これからも側に置いてくれるか?」
    「当たり前だ……頼りにしているぞ」
     国広がそう言って頭を撫でると、彼は頷いたようだった。
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    zyogasaki_

    DOODLE冬毛でもこもこむちむちの布九尾の話「きゅうん、くん……」
    「よしよし……」
     猫なで声を出している九尾は、腹を上に向け、国広に擦り寄って甘えている。胡座をかいた脚の間に収まっている姿を見ると子犬のようで、いつか国広よりも大きく育つのかと思うと寂しいものがある。
     まだ変化(へんげ)に慣れない彼は、こうして眠る前は元の姿に戻ることも多い。この姿に戻った彼を愛でるのは日課のようなものだ。

     ――成体でないとはいえ、あの気高い九尾がここまで自分に懐くと国広は思っていなかった。
     ただ一晩、飯をやって助けただけだがこうしてずっと傍に居る。
     人間の姿は弟の様で愛おしく、獣の姿は小さく愛らしい。そんな彼に好かれるのだから悪い気はしない。
     それに加えて彼は可愛らしいだけでなく、九尾としての力も強く、頼りになる。
     もう国広は彼無しの旅は考えられなくなっていた。
    ――ちりん
    「ふふ、この鈴つけて正解だったな。可愛らしいし、何より何処にいるか分かって安心する」
     彼に買ってやった首の鈴が鳴る。
     国広が贈った飾り紐に括り付けられているそれは、逸れないようにと町で買ったものだ。動く度にちりん、ちりんと鳴らす姿は猫のようで微笑ましい。 1319

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