「＄＆＆くん」
その二つ名は本名であるはずなのに、十何年経っても聞き慣れない。顔を上げると女が一人立っていた。クラスメイトだった気がするが、それは少し離れた場所にあと二人立っていたためようやく思い出せた。
会う約束をしているペンギンやシャチを、彼等が勤める病院の近くの広場で待っていた。目の前には噴水があって、その周りを円をかいて木々が植えてありベンチが置かれている。メインストリートからほど近いこの場所は、人々が行き交い笑い合っていた。そのうちの三人がこちらを見ている事にも気づいていたが、本に集中しているふりをして無視していた。話し掛けてほしくなかったから顔も上げなかったのに、と内心ごちる。
「＄＆＆くん、聞きたいことがあるの」

ロゾ日記side:Law③○月3日曇り
ゾロ屋は、出会ったあの公園から少し離れた所にある学校に通っている。どうやらあの日も、迷子になってあそこにたどり着いたと思われる。自宅の児童養護施設から学校までの通学経路に全くかかってないことから考えると間違いないだろう。迷子の才能は今も健在で、偶然を装って会いに行くのも一苦労だ。
ゾロ屋にそれとなく質問し、一緒に施設に行く約束を取り付けた。
まだ未成年のおれではゾロ屋を引き取ることは出来ないが、おれにはコラさんがいる。コラさんの運営する施設にさえ連れて来られたら、こっちのもんだ。

さて、ゾロ屋の施設の人間が話が出来るヤツだといいのだが…。出来れば平和的に事を運びたい。
キーマンはゾロ屋の言う"先生"だろうな。