忍術学園保健委員会委員長の善法寺伊作は、タソガレドキ城の忍び組頭である雑渡昆奈門とやっと恋人になれた。雑渡にのらりくらりと気持ちをかわされ続けてきた善法寺だが、先日ついに雑渡が折れ、付き合うこととなったのである。雑渡も善法寺のことは好きであるが、体裁というものもあり善法寺をはぐらかし続けていた。しかし善法寺がしつこいため、少しの間の気の迷いということにし、目を瞑ることにしたのである。
以下AI文章
「ぼく、雑渡さんと一緒にいられて幸せです」
「そうかい?それはよかったよ」
「ところで、今日は泊まって行ってもいいですか?」
「あー…….ごめんね。今日はこのあとちょっと用事があってさ」
「そうなんですか……残念だなぁ……」
「また今度来るからさ。そのときゆっくりしようよ」
「はい!」
雑渡の言葉を聞き、善法寺は顔をぱあっと明るくした。
(かわいいなぁ)
そんなことを思いながら雑渡は立ち上がり、襖に手をかけた。すると後ろから善法寺が声をかけてきた。
「あの、雑渡さん」
「ん?なんだい?」
「ぼく、雑渡さんのことが大好きです。これからもずっと一緒にいて下さいね!」
満面の笑みで言ったその言葉に雑渡は一瞬固まってしまったが、すぐにいつもの顔に戻り、「ああ、私もだよ」と言った。
そして部屋から出て行った。
善法寺はその背中を見つめて呟いた。
「愛してますよ。雑渡さん」
善法寺は雑渡が出て行った部屋の真ん中でひとり微笑んだ。
***
「尊奈門、どうやら私は伊作くんのことを甘く見ていたようだ」
雑渡は部下である諸泉尊奈門の部屋に転がり込むなり、開口一番そう言った。
「えっ!?何があったんですか?」
諸泉は突然上司がやって来て驚いていたが、何かあったのかと心配になった。
「実は、この間初めて恋仲となったのだけれどね。それがまあ予想以上に大変だったんだよ」
「恋仲って……善法寺伊作とですか?!おめでとうございます!!」
諸泉は驚きつつも、嬉しそうな顔を浮かべた。雑渡が今まで自分の気持ちを押し殺していたのを知っているだけに、この進展はとても喜ばしかった。
「ありがとう。でも大変なことというのはここからでね」
「どういうことです?」
「最近ようやく慣れてきて、手を繋いだり抱きしめたりできるようになったんだけど……それ以上に進まないんだよね」
「はい?それってつまり……?」
「うん。まだ接吻すらしていない」
「えぇ!!どうしてなんですか?」
雑渡からの衝撃的な発言に、諸泉は思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を塞ぐ。幸い雑渡の部屋には二人しかいないため、誰にも聞かれることはなかった。
「いや、理由はわからないけど、全くそういう雰囲気にならないんだよね。私は別にそれで構わないけど、伊作くんが我慢しているんじゃないかと思うと申し訳なくてね」
「うーん……。伊作くんのことだから、きっと雑渡さんを大事にしているだけだと思うんですけどねぇ」
「だと良いんだけど……」
雑渡も決して無理矢理関係を進めようと思っているわけではないのだが、恋人として触れ合いたい気持ちがある。
「じゃあ、一度二人で出かけてみてはいかがでしょうか?」
「出掛ける?」
「はい。どこか人気のない場所に行けばいいと思いますよ。そこでなら、伊作くんも安心できるんじゃないでしょうか?」
「なるほど。確かにそうだね」
雑渡は納得したように深く相槌を打った。
「では早速明日にでも誘ってみることにするよ」
「頑張ってください!」
「ああ、ありがとう。お前に相談して良かったよ」
「いえ、これくらい当然です!」
得意げになる諸泉を見ながら、雑渡は部屋をあとにした。
翌日。雑渡は善法寺を呼び出した。
「どうしましたか?急に呼び出すなんて珍しいですね」
善法寺は首を傾げた。
「いや、ちょっと話したいことがあってね。今日暇かい?」
「特に用事はありませんけど……」
「よかった。じゃあちょっと付き合ってくれないかな?」
「はぁ..。構いませんけど……」
雑渡の意図がわからず困惑しながらも、善法寺は承諾した。
二人は森の方へと向かう。城からも忍術学園からも離れた、でも木漏れ日の心地よい森の奥へと進んだところで、雑渡は善法寺に声をかけた。
「伊作くん。ちょっと止まってくれるかい?」
「えっ?どうかしましたか?」
善法寺は言われた通りに足を止め、振り返った。雑渡は真剣な表情をしていた。
(これは、もしかして……)
「ねえ伊作くん。ちょっと目瞑っててくれるかな」
「はぁ……わかりました……」
善法寺は言われるがまま目を閉じた。
「ありがとう。もう開けてくれても大丈夫だよ」
善法寺が再び目を開けると、目の前には雑渡の顔があった。その距離わずか数センチ。
「へ……?」
突然のことに善法寺の思考は停止してしまった。
「あの、雑渡さん?いったい何を……」
善法寺は混乱する頭でなんとか言葉を紡ぎ出そうとするが、上手くいかない。そんな様子を知ってか知らずか、雑渡はそのまま口を開いた。
「好きだよ、伊作くん」
雑渡の唇がそっと善法寺に重なる。
「……..ッ!?」
雑渡の言葉を理解した瞬間、善法寺の顔が真っ赤に染まっていく。そして、そのまま意識を失ってしまった。
「あー…….やっぱりこうなったか」
雑渡は倒れた善法寺を抱きかかえた。
(こんなつもりじゃなかったんだけどな)
雑渡は善法寺を抱えながら、困ったような嬉しいような複雑な笑みを浮かべていた。
その後、善法寺が目覚めた後、改めて告白し直して、晴れて恋仲となった雑渡と善法寺だった