きみをさらって 夢を見た。
俺が小学生のときの。
「諒一ィ、川ァ行くぞ、川ァ」
縁側から少しうちに入ったところで寝そべっていた俺に、謙二が庭から呼びかけた。虫取り網と釣竿とプラスチックの虫かごを持って、そのまま夏休みのしおりの表紙に載れそうだ。
その夏はいつもよりずっと暑くて、特に暑い日は熱中症になるからあまり外に出ないように言われた。三軒隣の親戚のばあちゃんが熱中症でぽっくりいってしまったせいもあって、大人たちはなんだかうるさかった。
「あっついじゃん。やだよ、俺」
「バカだなあ、暑いからいいんだろーが」
「でも母さんたち言ってたよ、今日は暑くて危ないから外で遊ぶな~って」
「そんなんお前んとこのばあちゃんだけだろ。大体もう百近かったんだからダイオージョーだよダイオージョー。たまたまに決まってんじゃん。いつ死んでも」
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