それは、暑い、夏の日の。 今年もまた、この時期に人間界に来てしまった。
いつかはやめなければと思うが、そううまくはいかないようだ。
『私が死んだらルシファーの中で生きることができるから死ぬのは怖くないんだけれど、こんな風に寝そべってるだけのところを見られるのは、ちょっと嫌だねぇ』
そう言って笑っていた次の日、彼女の灯火は消え、そうして俺は宣言通り、彼女の一番美しい部分をこの身に取り込んだ。
幾度となくさまざまな境目を乗り越えてきたが、この日ばかりは慣れるものではないなと自嘲する。 彼女はこんな、抜けるような青空の元に生まれたのだろうか。
「悪魔には関係のないことだな」
随分と魔界に入り浸っていた彼女の墓には誰も訪れることはないようで、いつもこの日に、俺が綺麗にして俺が育てた薔薇を手向けている。まるで”人間”がそうするように。
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