肌に触れる、その気にさせるキス砂漠の夜は昼と打って変わる。人肌が感じる寒暖差は激しいが、柱の一神であるセトにはさしたる問題ではない。
しかし、一度、神から半神に堕とされた際に極限まで人間と変わらない身となっていた経験から、白い外套を肩に掛けた。
開放的な窓辺に腰をかけ、外を眺める。
砂漠の砂が風に踊り、より低い地点へ流されている。晴れた日の月はラーの輝きでより明るさを持ち、その様を見ろと言わんばかりに光景を浮かび上がらせた。
神としての自認のはじまりは砂漠であった。太陽の陽を浴びれば熱し、暮れれば温度も急激に下がる。そして風が吹けば争うこともできずにそのまま舞ってしまう。ようよう見れば自分自身が浮き彫りになるようで、自嘲と半ば呆れた声が出ていた。
1844