臆病な恋から素直な愛へ 臆病な恋から素直な愛へ
例えば、親兄弟や近しい仲間に感じるような情を君に持てたら良かった。
そうしたら、何気なく君が触れた肩が妙に熱かったり、不意に笑いかけられた時にいたいほど心臓が高鳴る思いをすることもなかった。君が大層大事にしている奥方三人の話を聞く時も、わざと視線を外して感情を抑え込む努力など必要無かっただろうし、夢に出てくる君に涙することも、そんな朝に君を想って己を慰める羽目になることもなかった。君と会うたび虚しくなって、自分を惨めに思う必要はないのだ、と自分で自分に暗示をかけることもなかった。
けれど本音を言えば。俺は君に口付けてみたかったし、その腕に抱きしめられて眠ってみたかった。そうして目覚めた朝に、互いの顔を見て幸せを感じてもみたかった。
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