現役 実は知っていることがある。ほんの少し。
小さな村の宿屋の裏庭の、外でブランチを食べる用のテーブルで、私はパンを食べていた。ロカはまだ寝ていたし、アバン様は朝市に行って食料を調達してくると出かけていった。あとは朝が弱い老魔道士だけど、と私は宿の二階を見上げた。
「おはようさん」
扉を開けて宿屋から出てきたマトリフに、朝の挨拶を返す。普段起きる時間より随分と早い時間に現れたことで疑惑は確信へと変わった。
マトリフは私の横を通り過ぎて井戸に向かった。顔を洗っている後ろ姿を見つめて、なんと声をかけようかと迷う。
「あなたの歳を聞いたことがあったかしら」
「なんだよ突然」
洗った顔から雫をこぼしながらマトリフは振り返る。その顔から寝不足であることは見て取れた。
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