vanish partisan『セックスしないと出られない部屋』
「全然だめですね」
「傷ひとつつかないな…」
ちょっとした会議室くらいの広さの、窓のない四角い部屋。扉はついているが、鍵が掛かっていて開かなかった。その扉の上に堂々とかかっている看板に書いてあるのが、前述の通り『セックスしないと出られない部屋』の文字である。
「サモンズいけるか?」
「やってるんですが、魔力が散ってしまって」
「上級魔法が使えなくなっているのかな、この部屋は。出る方法はあのふざけた看板の通りにするしかないという事か」
なかなかイラッと来る達筆な字だ。どんなに呪文をぶつけようと、壁も扉も看板も、傷ひとつつかなかった。レインが石になれと言わんばかりにそれを睨みつけ、もう一度特大魔法をブッ込もうと杖を構えたのを、後ろから伸びてきた手がぽんと肩を叩いて止めた。もう一人この部屋に閉じ込められたオーターである。レインの石化効果のありそうな視線をそのまま向けられ、彼はちょっとため息をついて後ろを振り返る。
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