「すまない、待たせたな」
「いえ……」
黒いスーツで現れた彼女を見て、自分の服装チョイスを後悔した。
あまりラフすぎても、と思って普段よりはフォーマルなものを選んだつもりだが、それでも私服だ。彼女の隣に立つには少々派手すぎる。
シンの思惑に気付いてか、スーツ───喪服の彼女は、からからと豪快に笑い、シンの肩をバンバンと叩く。
「気にするなよ。皆も、堅っ苦しい格好よりは普段のお前が見たいだろ」
私はホラ、式典帰りだから。
色彩豊かな花束を抱えて、黒を纏う少女───カガリ・ユラ・アスハはもう一度笑った。
6月16日
オーブ国民にとって忘れられない日であり───シン・アスカにとっても忘れてはならない、悲しみの日であった。
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