石乙散文 人の多く集まる場所には負の感情が溜まって呪霊が生まれる。今まさにその場所はその危険性を孕んでいた。
目の前は人人人人で溢れていて、各々様々な格好をしていた。別に今日この場所で何か催し物があるわけではなく、この時間帯は大体これくらい人混みで溢れるのだという、乙骨自身は正直げっそりした。
「どの辺ですかね」
「相変わらず弱ぇ呪力の感知はヘタクソだな。あの辺が怪しいぜ?」
そう言って乙骨の隣で周りを見回しながら奥まった方を指し示したのは、乙骨が監視役を務めている受肉体の石流だ。訳あって今は一緒に任務にあたり、まずは呪霊の発生場所を特定していた。
「あんなところに?」
「ああ、急いだ方がよさそうだぜ、この人混みに紛れて、人間を攫おうとしてるだろうし」
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