落陽の空騒ぎ 午後の陽気が心地良い。温かな光の下で、野菜が瑞々しく輝いている。それらを不安定に揺らしながら、私は石畳の上で不規則な足音を鳴らしていた。
「わっ……とと。ふう……」
紙袋を胸元に抱き直し、少し張り切り過ぎたかしらと溜息をつく。気合を入れ直してよたよたと歩みを再開させると、後ろから馴染み始めた声が聞こえた。
「おいおい。何やってんだよあんたは」
「!」
驚いて足を止めた拍子に、ぐらりと林檎が傾く。
「あっ!」
「よっ、と。ほらよ、大丈夫か」
目を丸くして固まっている間にも、骨張った手はぱしりと林檎を片手に受け止めた。
「ヒューゴさん。ありがとうございます」
お礼と共に見上げると、逆光の中で何とも気不味そうな表情を浮かべる彼と目が合った。
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