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    asayahikaru

    @asayahikaru
    ウォロショウにハマって初めてスケベを描いているのでポイピクつかいはじめたウーマン

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    asayahikaru

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    ウォロショウの小説を書こうと思って途中で時間が無くなったのでたぶん完成しないやつです。まだエッチないです。

    暗くて眩くて、無数にあるのに一つも手の届かない物 「アナタにとって、この世界は『無い物』ばかりのつまらない世界なのでしょうね」


     柔らかな風は若い草原を揺らしながら、ゆるりと頬を撫でて軽やかに去ってゆく。あたたかな日差しが木の葉の隙間を縫って顔に降り注ぐ。
     両手脚を草の上にひろげ、気持ちよく食休みをしていたショウに、そんな灰色の言葉を投げたのは、行く先が同じだからと道連れになったウォロだ。
    「なんでそう思うんですか?」
     幹に背をもたれて色のない顔でこちらを見下ろすウォロと目を合わせると、すぐに逸らされた目線は行き先なく遠くを仰いでいるようだった。
    「時をたどればあなたの生きた世界につながるとしても、あなたの常識は今のこことは随分異なりますから、ずっと文明は進歩していて不便なく暮らしていたのだろうと想像できます」
    「知りたいですか?あたしが生きた世界」
     ショウがヒスイで暮らすようになってからもう二年になる。元の世界を思い出すことがないとまではなくとも、忘れて過ごす日のほうが増えている。
     ウォロの言葉に、喧噪と灰色の世界が脳裏をよぎる。耳元をまた柔らかな風が過ぎてゆく。目を開けると、青と緑が視界を満たす。ショウはそれだけで満足して、深く息を吸った。
     視線を感じて目を向けると、ウォロがまたこちらに目を向けている。そのまま目を合わせてウォロの折を待つが、ウォロもこちらが口を開くのを待っているようだった。
    「そりゃあ、無い物ばかりですよ」
     目を見たまま自嘲気味に言葉を吐き出す。
    「ここも」
     状態を起こして、ウォロの隣に背をもたれた。目線を広がる草原に移す。
    「こんな開けた場所はありません。オヤブンのギャロップが縄張りにしていて皆が警戒するあの大岩も、木の実が沢山生るあの木も、クスリソウの群生地も、全部…失くなります」
     親しんだ景色を思い出しながら、無意識に膝を抱きしめ、目を伏せる。
    「コトブキ村は今よりずっと大きくなって、銀河団の本部より大きな建物がいくつも並んで、行き交う人々はお互いに興味を持ちません」
     その言葉を最後に小さくうずくまるショウは動かなくなった。また望郷の念に駆られているだろうかと様子を見るも、ショウが何を考えているのかはウォロの知るところでは無かった。
    「アナタだけがポケモンの扱いに慣れている訳では無かったのでしょう」
     ショウは腕から少しだけ顔をあげた。
    「6歳くらいの子でも、普通にポケモンを持っているような時代ですよ。それでも、あたしは『強い』方だという自負はありますけど」
    「強い?」
    「ポケモンリーグ」
     ポケモンリーグ、全く聞きなれない言葉だった。好奇心に触れるだけ触れて、そのまま言葉を止めるショウにウォロは苛立ちを覚えた。
    「あたしは、一番強かったんです」
     察するに、大会のようなものがあり、そこで優勝していたということなのだろうが、ウォロにはその規模すら想像ができなかった。それが悔しくて、でも、ああそうか、『だから』この人だったのかと。合点も行く。
    「なら猶更恵まれて、満たされていたでしょうに」
     同情、否、憐憫の情を向けることで、苛立つ腹の虫を治めた。
    「…」
     ショウがパっと顔をあげ、首をかしげてウォロを上目遣いで見上げる。
    「ここには便利なものは何もないです。冷蔵庫も、掃除機も、エアコンも、洗濯機も、水道すら。火を起こすのもポケモンが居なければ石を叩いて付けなければならないし、お風呂を沸かすのに薪をくべるなんて、あの時代なら笑ってお断りです」
    「…それらがなんだかは解りませんが、思った通り『無い物』ばかりなのですね」
    「いいえ、ウォロさん」
     ショウが、恐る恐る手を伸ばし、そっとウォロの手に重ねた。
    「あなたが『居る』」
     少し震えたその手とは対照的に、夜色の瞳がまっすぐに灰色の瞳を見据える。
    「あなたと見るこの世界が『在る』」
     ウォロが重ねられた手と反対の手を、体の向きを変えながらショウの頬に添えると、ショウの夜が少し揺れて濡れるのが見える。
     何度重ねたかわからないショウの柔らかく小さな唇と、己の少しかさついた薄い唇を合わせた。
     軽く触れるだけで、胸の奥からじわと暖かなものが生まれる。それだけで十分だった。
    「もう、帰りたいと思いません。あたしの帰る場所は、ウォロさんのそばがいい」
     ショウの重ねた手に力が入るのを感じて、裏返して握り返す。
    「何故です、不便なく危険も苦労もない世界があるのでしょう」
    「その世界で『あたし』は沢山の人に囲まれた『独り』でした」
     いつだったかウォロがシンオウ神殿で言った言葉がリフレインする。

     ワタクシの夢と相いれない
     ワタクシは結局ひとりでしたが
     アナタは違う……

    「あたしも同じだと、思ったから」
     小さな唇から紡がれるウォロを肯定してゆく言葉が、胸のつかえを少しずつ溶かしてゆく。
    「ジブンのせいで此処に来たとしても?」


    このあとよるほしぞらをみあげながら「あれもみらいにはないんだよね」とかいう
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