────あーぁ、あんな雑にするなら別に結い上げなくてもいいのに…
乱れた髪を気だるそうに軽く整えまとめ上げる。まったく丁寧ではないけれど、それが今の阿絮の日課だった。
雑な手付きのわりに、簪だけはやたら優しくに扱うんだから…。
夏のある日、武庫の入り口を塞いでいた雪壁の一角が崩れ、人が通れる程の穴があいた。
久々の太陽の光は眩しくて、目が慣れるのに時間がかかったけれど、阿絮はすぐさま外に出た。
それから毎日、彼は日が登ると外に出ていった。日向ぼっこが好きだと知ってはいたけれど、そんなに好きだったとは…日が出れば外に行くのは、あの時の阿絮の日課だった。それに着いて行くのが僕の日課ではあったのだけれど。
そんな日が続いたある日、太陽が顔を出し、相変わらず阿絮は外に出てしまい、相変わらず僕はそれに着いて行く。いつも通りの日。
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