クズな双子は愛しすぎ双子は女性関係にだらしない。
────いつからだっただろか? 気づけば双子の周りには、1度でも抱かれたいと言う女の子達で取り囲まれていたような気がします。
大事な幼馴染みをとられた気持ちもあったし、大事だからこそ恋人が出来た事を祝福しないとと言う気持ちもあったし、正直心中複雑でしたが、まぁ僕には関係ない事ですけどね、そう心の中で呟いて自分自身の気持ちに蓋をして心の奥底に封印しました。
◇◇◇◇
僕の朝は早い。それもこれも双子を起こし、朝食を作り食べさせて学校に向かうからである。
生まれた時からお隣同士だった僕達は親同士もとても仲が良く、互いのお家にご飯をお呼ばれは当たり前、お泊まりするのも常でした。小さい頃はお風呂も一緒で、初めてお風呂拒否をした時は、物凄い駄々をこねられました。まぁどんなにごねられても初潮がきてしまい、双子と入る訳にはいきませんでしたからね。断固拒否です。その頃から双子の両親が海外出張で長期留守がちになり、僕がご飯を作りに行くようになりました。一緒にお風呂に入らない対価がご飯作りでした。えぇ、慈悲深い僕はきちんと対価を支払いますとも! 腐ってもリストランテを経営する母の娘である僕が、料理が作れないだなんて有り得ません。最初は目玉焼きすら碌に作れませんでしたが、今ではガッツリ双子の胃袋を掴んでいます。努力の甲斐がありました。
今日の朝ご飯は何にしよう?、と考えながらジェイドを起こしにいきます。毎朝2人を起こすのは大変なので、片方を僕が起こしに行き、起こされた方が残された片方を起こしに行くシステムを導入しました。今日はジェイドを起こし、ジェイドが起きたらジェイドがフロイドを起こしにいきます。ちなみに明日は逆で、僕がフロイドを起こしたらフロイドがジェイドを起こしに行きます。
僕は勝手知ったるなんとやらで、ジェイドの部屋にノックをおざなりに2回叩き即ドアを開けます。起きないの分かってて返事を待つのは時間の無駄ですからね。
ジェイドは熟睡するとなかなか目を覚ましてくれないので、乱暴なくらいに叩き起します。
「ジェイドおはようございます、朝です。起きて下さい」
まずは暖かな布団をガバリと剥ぎとります。まぁこんな事ではジェイドは起きません。次は耳元で大音量のアラームを鳴らします。微動だにしませんね。次は顔を触りまくります。頬を叩いてみたり鼻をつまんでみたりします。流石に不快のようで顔をシワっとさせてます。そろそろ覚醒してくれると有り難いのですが。最終作戦は、ベットから転げ落とすのですが、これは労力もいるし逆襲を受けるので嫌なんですよね。でも起きてくれそうに無いので、これしかありません。意識の無い人間を動かすのって本当に大変なんですよ。ジェイドの身体に触れようと手を伸ばした瞬間、逆に手を掴まれジェイドの上にポスンと乗り上げてしまいました。やはり逆襲を受けてしまいました。
「ジェイド、寝ぼけてないで起きて下さい」
手を掴まれていない方の手で、ジェイドの顔をするすると触ります。するとジェイドが何か呟きましたが、小さすぎて何を言ってるか分かりませんでした。聞き取ろうと顔を近づけたら、
「ゃんっ」
僕は変な声を出してしまいました。と、言うのもジェイドが僕の制服のスカートの中に手を突っ込み、あろうことか下着の中まで手を差し入れていたからです。生のお尻を触られるし、変な声は出るしでジェイドを叩き起してやろうと思ったら、ジェイドが驚いたように目をパチパチとしていました。
「おはようございます、アズール」
まるで何もなかったかのようにジェイドが挨拶をしてきました。
「……おはようございます、ジェイド。どちらの手も離して貰えませんか?」
ジェイドの左手は僕の手を掴んだままだし、ジェイドの右手は僕の尻を触ったままである。
「どうしましょう、アズール。手を離したくありません」
「……なるほど。ジェイドは朝ご飯抜きが良いのですね。分かりました」
僕は剣呑な目をジェイドに向けました。
「違うんです、アズール。本当に今、己と戦っていまして。この状況をどうしようかと」
「いやいや、何言ってるんです。手を離せば良いだけですよ?」
「……今それをするとですね……怒らないで下さいね、アズール」
ジェイドは少し困ったような顔をしながら言うので、何があるのか?と思ってるとジェイドは僕の尻を軽く触ってからゆっくりと離れていった際に、僕のパンツに指を引っかけスルスルとズラしていきます。
「ひゃんっ」
またしても変な声が出てしまいました。
「あぁアズール、そんな声で僕を煽るなんていけない人」
「バカジェイド! 何故普通に手を離さないんです!」
「下着に指が引っかかってしまったんです」
「絶対わざとだろ? 言い訳はいりません。手を離して下さい!」
「つれない事を仰らないでアズール」
「こういうのは彼女としなさい!」
「ではアズールが彼女になって下さるんですね! ありがとうございます」
ジェイドは嬉しそうに話をしていますが、相変わらず僕のパンツから手が離れていません。
色々とイラッときたので、ジェイドの顔面を思い切り叩きます。ブッと面白い声が聞こえましたが無視です。
「ジェイド、お前もフロイドもお断りです! 僕は一途な男が好きなんです。女の子にだらしない男は嫌いです!」
「じゃあ全部の女、片付けたらアズールはオレ達の彼女になってくれる?」
いつの間にかフロイドがジェイドの部屋の扉を開けてこちらを伺っていました。
「フロイド、おはようございます。珍しく早起きですね」
僕は相変わらずジェイドの上に乗ったままの挨拶ですが、ジェイドにパンツを剥ぎ取られそうで動けず、仕方なくこのままの体勢で朝の挨拶をしました。
「おはよぉ、アズール。ねぇオレの言った事に答えてよ。アズールは彼女になってくれんの?」
フロイドは扉にもたれかかったまま、真剣な顔で僕に訴えてきます。
「では真剣に答えます。お前達が本当に全ての女の子たちと切れて、僕だけを愛すると誓えるなら。恋人だけじゃないんだぞ! セフレもちゃんと切れるのか? 女の子にだらしないお前達が本当に出来ると思えません」
「言質とったからね、アズール! マジでオレ達、アズールの彼氏になるから」
「良いでしょう! 僕に二言はありません」
僕はジェイドの上に乗り上げたままの情けない格好で、声高らからに宣言しました。
「あぁアズール、僕達の彼女になってくれるんですね。幸せで胸がいっぱいです」
それまで黙って僕とフロイドの話を聞いていたジェイドが嬉しそうに喋っていますが
「僕は知ってるんだぞ、ジェイド。お前の方が女の子にだらしない事を」
ジト目でジェイドを睨んでやると、ジェイドはニコニコと微笑んで僕を見るだけで何も言ってきません。これは誤魔化したい時のジェイドですね。
「ねぇ、アズール?」
フロイドが話しかけてきたので
「なんです? フロイド」
「アズールとさぁジェイドからは分からないかもしれないけどぉ、こっから見たアズールさぁ、すっげーエロい事になってるけど大丈夫? 多分オレがしゃがんだらアズールのパンツの中身見えるかもしんねぇ」
そう言ってフロイドはしゃがもうとするので、慌てて僕は
「待て待てフロイド! しゃがんではいけません! ジェイド! いつまでこうしてるんです! 離しなさい!」
僕の平手打ちがジェイドの頬に炸裂しました。
◇◇◇◇
その日から本当に双子は女の子と言う女の子と一切交流を止めました。わざわざスマホの初期化をして僕と家族だけを登録する徹底ぶりでした。
そして
「アズール、僕達の彼女になって下さい」
「アズール、オレ達の彼女になって」
と晩ご飯を終えた後に言われました。
「……分かりました。ただし、浮気は本当に許しません。その場合は、速攻で別れます」
「有り得ません。アズール、貴女を一生愛し続ける事を誓います」
「有り得ねぇよ。アズールだけだから。アズール以外、誰も要らねぇ」
ジェイドとフロイドの言葉を聞いて僕はひと呼吸おき、
「今日からジェイド、フロイド、お前たちは僕の彼氏です」
僕が言うと双子は幸せそうに微笑んで、僕を両側から優しく抱きしめてきました。そしてジェイドが僕の顔に近づいてキスしようとしてきたのを察知したので、思い切り自分の手を使って阻止します。
するととても悲しそうな顔で
「何故止めるんです? アズール。僕達は貴女の彼氏ではないのですか?」
「確かに彼氏です。……が性的接触は暫く禁止します」
「え、マジで言ってる? オレも?」
フロイドが慌てて間に入ってきました。
「勿論、2人共です」
僕はキッパリと答えます。
「何故です、アズール。僕達はアズールと身も心も分かち合いたいのに!」
ジェイドがお慈悲を、と言っていますが
「……頭では分かっているんです。お前達は僕を一途に愛してくれる、って。でも心が追いつかないんですよ! お前達の爛れた女性関係があった事実を受け入れられないんですよ」
「確かにオレ達クズみたいな付き合い方してきたけど、それはアズールに手を出しちゃあいけないと思ったから他で発散しちゃったけど、もうそんな事しないよ? 本当にダメ?」
フロイドがコテンと首を傾げて可愛くお強請りしてきました。このフロイドにとても弱い僕ですが、ここは心を鬼にします。
「ダメです。無理矢理したら別れてやります」
「分かりました。無理矢理でなければ良いのですね? アズールの許可があれば良いと」
ジェイドが言うので
「僕が許可したら良いでしょう」
「ではアズール、キスしたいしセックスしたいです」
とジェイドが直球で言うので
「お前はバカか? ダメに決まってるでしょう」
「ちょっと待ってアズール。質問。何処までがOKで何処までがダメなの?」
とフロイドが言うので、
「分かりません。僕が嫌だと思ったことは許可しません」
「え、それって日によっては手を繋ぐとかでもダメな時があるって事?」
「あるかもしれません」
「……オレ達の行いが悪かったんだから、受け入れる」
叱られた仔犬のようにシュンとするフロイドに少し可哀想になり
「僕もなるべくノーと言わないようにします」
「ありがとう、アズール」
「ありがとうございます、アズール」
これで円満にお付き合いが出来ると思っていましたが、僕の彼氏達がトラブルなく過ごしていける程、非モテでダサい男な訳もなく僕は自ら公衆の面前で2人にキスする事になるのですが、その話はまた別の機会にしたいと思います。
【END】