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    nagi_nan1031

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    nagi_nan1031

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    防衛軍6パロ「◾️◾️◾️◾️」

    みんみんとセミがおおきく鳴くなか、自分を呼ぶ声が聞こえて振り向く。
    かさかさのしわしわで土だらけの手が、おれのほっぺをぐいっと拭く。
    さっきまで汗でべたべただったところが何だかすっきりした気がした。
    畑仕事が終わったのかもしれない。
    おばあちゃんはおれの汗を拭いた手でわしゃわしゃとおれの頭をなでた。
    「そんなとこにいたら日射病になっちまうよぉ」
    「うん」
    そのままおばあちゃんの手がぺたりと首の後ろにくっつく。
    多分日に焼けたせいだ。そこはひりひりして痛かったけど、おばあちゃんの手が置かれたらなんだか平気になった。なんだか太陽から守ってくれているきがした。
    「父ちゃんから電話でな、あした生まれるってさぁ」
    「ふーん…」
    「嬉しくないんか」
    「うーん、よくわかんない」
    おれは今、おばあちゃんの家にお泊まりしてる。おとうさんが言うには、おれにもうすぐと弟が生まれるらしい。
    そろそろ生まれるし、おとうさんは家のことで忙しいから代わりにおばあちゃんの家にお世話になりなさいだって。
    もちろん、弟ができるのは嬉しいしはやく会いたい。だけど、次会う時はいままでおおきかったおかあさんのお腹がぺったんこになって、代わりにあかちゃんがいるなんてへんな感じだ。
    「そうだよなぁ。でもきっといい子になるよぉ。なんてったって◾️◾️◾️◾️の弟だもの」
    「そうかなぁ」
    「さ、帰ってそうめんでもたべるか」
    「おれ、もうちょっとここにいたい」
    「ん〜?」
    うしろにいたおばあちゃんが近づいて、しゃがんでいるおれの後ろから覗き込む。
    「アリンコがそんなに珍しいか」
    「なんかでっかい」
    おれの足元にはまっくろいアリが並んでせっせと虫の羽や足を運んでる。
    家の近くでみるアリよりもなんだか大きくて、戦ったらつよそうだ。
    手を伸ばしてアリの目の前に指を置くと、一瞬止まったアリはおれの指を避けてあるく。
    手の上に乗ってほしくて何回か同じことをするけど、どうしても上手くいかない。
    そこで両手でかこうように閉じ込めると、びっくりしたみたいにうろうろした後にやっとおれの手にのぼった。
    「乗った!」
    「そうだねえ」
    おばあちゃんに見せると、うんうんと嬉しそうにうなづいて、こんどは自分のかおの汗を手拭いでふいた。
    手の上をはやく走るアリがなんだか面白い。自分がおおきな木になったみたいだ。
    しばらくあそんでいると、「そろそろ戻してあげんか」っておばあちゃんが言った。
    「えー、なんで?」
    「アリには仕事があるんよ。邪魔しちゃいけねえ」
    「アリは仕事しないでしょ?」
    「これこれ、アリを馬鹿にしちゃいけねえぞ」
    「でも虫だよ?」
    口がとんがらせて言うと、おばあちゃんはやれやれと首を振った。なんだかおかあさんにそっくりだ。
    「虫だって命があるんだ。命があるってことは生きてるってことだし、生きてるってことはそのためにやらなきゃいけねえこともある」
    「あ、おれしってるよ。つぶしてころしちゃ可哀想だから、大事にしなさいって」
    道徳の授業で命を大事にしなさいって習った!
    そういうとおばあちゃんは「子どもに教えるのはむずかしいなぁ」と言った。
    「可哀想とかじゃなくてなぁ、ちゃんと尊重してあげにゃならんよ」
    「そんちょう?」
    「要はな、」
    「…………おばあちゃん?」

    その後続く言葉が、急に聞こえなくなる。
    口だけが動いているのに、言葉がなくなった。



    「兄者!!!!!!」



    鋭い声が耳をつんざいて、ハッと目を開ける。
    さっきまでの突き抜けるような晴天も肌を焦がす日差しもどこへやら、どんよりとした曇天が空を憂鬱そうに覆っていた。
    その代わりにあるのは、銃声、爆撃音、破壊音、悲鳴。
    それらが不協和音のように重なっては消えていく。
    ……なんだか懐かしいものを見ていた気がするが、すでに五感全部を使って伝わってくる物騒な雰囲気にかき消されていた。
    『兄者、大丈夫か!?』
    ぎしぎしと軋む体と、やけに痛む頭が鬱陶しい。
    耳にはめたイヤホンからおついちの声が聞こえた。どうやら暫く意識がなくなっていたらしい。
    手、足、胴体を順番に動かしながら眺めて素早く己の身体の状況を確認する。
    何故こうなったのかはわからんが、幸いにも手足や指が吹っ飛んだ様子はない。上々だ。
    「なんか意識ぶっとんでたわ…。何があった?」
    『弟者がビルごとα型の大群吹っ飛ばして、その破片が兄者の頭にヒットしたんだよ!!』
    「…どんくらい気ィ失ってた?」
    『5分くらいか?敵も周りにいないし、回収しようにも下手に動いたら逆に呼びそうだから寄らなかったけど…。早く気がついて良かったわ』
    はぁあと特大のため息をついてから、遠くでもわかるほどの馬鹿でかいギャリアキャノン砲がする方向を睨みつけた。
    「…………オイコラ戦犯」
    『……』
    「無視すんな弟者聞こえてんだろ」
    『…はい』
    「はいじゃないだろてめぇ。何か言うことあんだろうが」
    『ごめぇん、兄者』
    「お前ごめんで済むと思ってんの!?」
    予想外に緩い弟の謝罪に思わず腹から声が出た。
    なんてったってここは戦場だ。数年前は大都会でビルが立ち上っていたこの街の風景は、今や見る影もない。まるで怪獣映画さながらにぼろぼろに崩壊し、所々最早更地になっている。その中でも運良く残った建物は、今や怪物が自由に這い上っていた。
    下手をしたら殺されていた…そもそも殺しそうにすらなっているという状況に対して反省の色もないこの馬鹿野郎に空爆を要請したくなる衝動を過去最高の努力で抑えた。
    あれでも血の繋がった弟なのだ。直接ぶん殴った方がスッキリするに決まっている。
    「おついち、戦況は?」
    『西にα型用、北にγ型用のアンカーがある。γの方は今弟者が速攻で落としに行って……あ、落ちたなアレ。落ちました』
    「エイリアンは?」
    『まだ来てないかなぁ。兄者が伸びてる時に本部から南東で戦闘開始の報告があったから多分そっちに行ってんだろ。ストーム2が先陣切って対応ちゅー』
    「了解。俺はアンカーやるから、おついちは散らばってるやつ片付けろ」
    『弟者の方は?』
    「ビルごと敵。吹っ飛ばすほどはしゃいでんだろ?γの相手させとけ」
    『ちょっとぉ!?』
    α型に比べて、γ型はその体と質量を活かして転がり突撃してくる分たちが悪い。群れの中で一瞬でも立ち止まった瞬間、絶え間なく自分の倍以上ある豪速球の体当たりを喰らって速攻でお陀仏だ。まあそうとはいえ、フェンサー特有の鋼鉄の装備と重火器を持ってるアイツなら何とかなるだろう。
    そもそもこれくらいでくたばるやつでもない。苦戦はするだろうが、なんとかするだろう。
    そう結論づけて、本部へ戦車の要請をする。
    決してさっきの仕返しとかではない。断じてない。





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