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    kano5969

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    オチが家出して帰ってこないし…没るには…なやつ

    七夕祭窓の外は当然のように降る雨。司は少しだけツマラナイ気持で窓辺に吊るされていたてるてる坊主を指で突付いた。
    昨夜、レオと2人で作ったものだ。


    「スオ〜きいてきいて!織姫と彦星が天の川で〜ってどうした?そんな顔して?」

    スマートフォンで天気予報を見ていた司にレオは出来立ての新曲を披露すべく駆け寄ってきたのだが、司の眉間に刻まれた皺に気付き首を傾がせた。

    1週間も前から天気予報では雨であると告げられていたが、それは前夜になっても変わることなく傘マークが並んでいる。朝から夜まで100%だ。
    司がレオにスマートフォンの画面を見せるとレオは何だそんな事かと小さく笑った。
    「楽しみにしていたんですけど……こればかりは仕方ありませんね」
    7月7日、七夕祭が開催される。仕事が終わったら一緒に行こうと二人で約束をしていたのだ。しかし、雨が降ってしまえば中止となってしまう。司はそれを憂いていたのだ。仕方がないと口にしながらも落ち込んでいる司にレオはふむと頷いてポンと手を打った。
    「よし、てるてる坊主を作ろう!」
    「はい?」
    そんな非科学的なものなんて、と眉を下げたが、レオが大丈夫だと自信満々にふんぞり返るものだから、その勢いに押されて司は目をパチクリとさせた。

    「見て見て!てるてるスオ〜出来た!あ〜した天気にしておくれ〜♪」
    「それ私ですか?私はそんな間の抜けた顔はしていませんが?」
    「可愛いだろ〜?にっこにこ顔のスオ〜!」
    「はぁ……では私はてるてるレオさんを作りましょうか」
    「あ、それいいな!並べて吊るそう!」
    「何だか物騒ですね……」

    ティッシュを丸めて、包んで、輪ゴムで留めて、顔を描く。ごく一般的なてるてる坊主なのだが、司は見様見真似で作ってみる。不慣れな手つきで、けれど器用に相手を模した特徴を色付けて。こんな物で雨が止むなんて思ってはいないが子供じみたお遊び自体が司にとっては新鮮で段々と楽しくなってきた。
    「ふふふ、どうですか?私のてるてるレオさんは?上手に描けているでしょう?」
    「うんうん、おれのしっぽ髪も作ったんだな〜?上手、上手!」
    先程の沈んでいた表情からは一変して誇らしげにてるてる坊主を掲げて笑う司にレオは嬉しくなって、司の頰にチュっと口付けた。
    「ちょっ……」
    「はい、てるてるスオ〜もてるてるレオさんにちゅ〜っ」
    「もう……」
    レオは手に持っていたてるてる坊主を司の手の内に同じ様に口付けさせて悪戯っぽく笑むと司は気恥かしく頬を掻いて、てるてる坊主を窓辺に並べて吊るした。



    結果は無情にも御覧の通り。
    司に突付かれて、てるてる坊主はクルクルゆらゆら楽しげに踊る。レオより一足早く帰宅した司は恨めしげにそれを見つめていた。
    (まぁ、なんだかんだで楽しかったから良いですけどね)
    ふぅ、と諦めの溜息を吐いてカーテンを閉めると、玄関先で物音がした。次いで司を呼ぶ声がする。
    「スオ〜っ!スオ〜ぉぉぉぉっ!」
    「はいはい、騒がないでくださ……レオさん?!どうしたんですか?ずぶ濡れじゃないですかっ」
    「傘を差したら負けな気がする……そんなことより荷物持つの手伝ってくれ」
    「何と戦っているのですか貴方は……」
    レオの両手にはパンパンに膨れたビニール袋が握られている。重さに耐え兼ねてレオの手はプルプルと震えていた。
    「何をそんなに買い込んできたのです?いえ、それより私はtowelをお持ちしますから荷物はそこに置いてレオさんは動かないでくださいねっ!」
    夏とはいえ雨に濡れた状態のままでは風邪を引いてしまう、と司は慌ててタオルを取って戻りレオの頭に被せてやわやわと拭いた。
    「あのな、ヤキソバ買ってきた♪」
    「はい?」
    「あと、バナナと〜チョコ缶と〜金魚のおもちゃと〜」
    「な、何ですか?えぇと?」

    玄関先で司に大人しく拭かれながらレオは歌うように大きく口を広げて声を上げる。
    「浴衣!あるよなぁ?ほら、Knightsのイベントで着たやつ!」
    「ありますけど……さっきから一体?」
    「楽しみにしてたんだろ?お祭」
    「えぇ、ですがお祭は中止ですし……」
    「大丈夫!おれの曲とスオ〜の歌でお祭をしよう」

    そう言って司の腰元にレオが抱き着いたからレオを拭う司の手が止まる。濡れた衣服から移る湿り気とその温度がじわじわと腕の中の存在を伝えて例えようのない高揚感が沸き起こる。
    楽しみにしていた祭が中止になって落ち込んでいるだろうと察してレオが司をどうにか笑顔にしようと考えてくれる、どんなに滑稽でも突拍子がなくとも司にはこうして伝わる。そんな事があまりにも、嬉しい。
    頬を寄せるとレオの頬はひんやりとしていて気持ちが良い。司の浮上した熱を冷ますのに丁度良かった。

    「その前に……一緒にお風呂に入りましょうか?」



    湯上がりに揃いの浴衣を身に着けて、未だに降る雨音を聞きながら揺れるてるてる坊主に倣ってレオは司の手を取った。

    「これはな、織姫と彦星が七夕の夜に2人を隔てていた川の中心で踊ってる曲なんだぞ〜こうやって〜♪」
    「あっちょっと……」
    「わはは〜歌えスオ〜」

    雨音を打ち消す様にスマートフォンから流れる曲に合わせて踊り出すレオに慌てて合わせるも、家具の置かれた部屋では密着した状態になってしまう。これではまるでチークダンスの様だと司は触れ合う頬をじんわりと染めた。
    星屑が舞うようなロマンチックな曲調が次第にしっとりと色を纏う。司とレオもいつしか足を止めてただ寄り添い合って抱き締め合うだけの時間が流れた。

    「雨が降って良かったなぁ、スオ〜?」
    「え?何故ですか?」
    「だってお外じゃこんなふうには踊れない」
    「これは最早Danceと言えるのでしょうか……でも、そうですね……雨が降って良かったです」

    司の胸元に額を埋めていたレオが降ってきた司の笑い声に顔を上げて目を細める。連日溜息ばかりだった司の緩んだ表情が只管に愛しい。

    「見て見てスオ〜?てるてるスオ〜とてるてるレオさんも楽しそうに踊ってる!雨が止んじゃったらてるてるさんの出番が無くなっちゃうしなぁ?」
    「成程?Dateの時間稼ぎに雨を降らせているのですね?仲がよろしいことで」
    「わはは!俺たちも仲良くしよう!」

    冗談めかせて笑い合ってそっと唇を重ねる。
    くるくるくる、と雨が止むまで窓辺でてるてる坊主も踊り明かしていた。

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