「ゆーうーさーくっ!」
「おい、やめろと何度言えば分かる」
背後から抱きつけば呆れたような声でそう言う遊作。最初は驚いて怒っていたのに、最近では慣れたのか反応が薄くて少しつまらない。
「離れろ」
「ヤダー寒いもん」
「お前な…」
何かを言いかけるも、はあ、とため息一つを吐いてから結局何も言わずに休憩時間の間はされるがままになる。そんなことを繰り返していたある日のこと。
「ん」
たった一言とともに差し出された、1枚の長い布。
「使い方は分かるな?」
「なんで?」
それが人間が寒さを防ぐためのものということは知っている。遊作が使っているのも何度も目にした。分からないのはどうしてそんなものを遊作が俺に渡すのかということだ。
「見ていて寒々しい」
「でも…」
「いいから受け取れ。今日はそれを渡しにきただけだ、じゃあな」
遊作は早口でそう言うと、渋る俺の手に押し付けて反論する間も許さず帰ってしまう。
しばらくもらったそれを見つめた後、遊作がしていたのと同じように自分の首に巻いてみた。
遊作にくっつく口実として「寒い」と言っただけで、本当は寒くも何ともないのだけれど。分かってるくせに、ほんとに変な人間。
―――でもこれは、あったかい気がする。