レオナが生け贄になる話ハーツラビュル寮寮長、リドル・ローズハートから始まり、次々とオーバーブロットが起きた1年がもうすぐ終わろうかという頃。世界は、マレウス・ドラコニアのオーバーブロットから日も浅いというのに、再び滅亡の危機に瀕していた。
『cladis』。それに付ける名前は、それ1つしか考えられなかった。耐え難い悪臭を放ちながら世界中を蠢き回り、生物を溶かす酸を撒き散らす。そして―――人種、国籍、性別その全てに関係なく、人を喰った。そいつは直径10メートル程のスライムのようにどろどろした肉塊で、見るだけで吐き気を催すような、まさに厄災だった。各国の首脳達は会議を開き、様々な対抗策を講じたが、世界屈指の魔法使いであるマレウス・ドラコニアはオーバーブロット直後、茨の谷領主のマレフィシア様が長年卵に魔力を注いでいたせいで絶好調とは程遠いとあっては、cladisを止めるのに必要な魔力量が圧倒的に足りなかった。
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