「ん…ここは…?」
フェリシアーノは冷たい空気を感じて、思わず目を覚ました。しかし、なぜか視界が暗い。アイマスクでもされているのだろうか。
「確か…俺…」
フェリシアーノは記憶を辿っていった。
いつも通り、アルフレッドが会議を仕切って、無茶苦茶な提案をし、それをアーサーが否定して、それにフランスが乗っかって賛成して、世界会議が騒がしかったところを、ルートがみなに注意して、解散して…
そこまでは覚えている、でも、俺が帰ろうとした瞬間から記憶がない。
「やっと目が覚めたか?バカ弟」
「こ、この声はにっ…兄ちゃん…??」
フェリシアーノはこの声に聞き覚えがあった。
ここに閉じ込めたのはロヴィーノ、ヴァルガスだ。
「なんでこんなことしたの、?」
震え声で上手く声が出せない。けど、声を絞ってこう言った。すると、
「お前が他のところに行くからだ」
「…え?」
「俺はお前のことが好きだった。好きで、好きすぎて他の男にじゃれるのが苛立った、」
「そんな理由で、俺をここに閉じ込めたの?」
「そんな理由だと?」
ロヴィーノの低く、怒りのこもった声につい怖くなる。
「大体、お前がムキムキジャガイモ野郎の所に行きすぎなんだよ。前とかフランシスとか、アントーニョに口説かれてたのに、満更そうでもなかったな??」
「ちがっ…それは勝手にフランシス兄ちゃんが…」
「他の男の名前を出すな。俺だけを見て欲しいんだよ。」
「…。兄ちゃん」
いつからだろう。俺はフェリシアーノを追っかけていた。
あいつは、可愛くて、みんなに愛されていて、絵や何もかもが俺より上だった。幼少期からその差は愕然だった。
だけど、俺の側にはいなかった。ルートや、菊、俺の元から離れていった。
アントーニョだってとっかえてっていうぐらい、弟は有能だった。
だけど、俺は絵も掃除も、何もかもが駄目だった。
だからバカ弟をみると、嫉妬と、憎しみと、憧れなんかがぐちゃぐちゃになってどうしても駄目になる。
だけど、俺はフェリシアーノを好きになったきっかけがあった。
こんな暴言だって吐いても、今、監禁されていてもフェリシアーノは抵抗せず、怯えている。あぁ、その顔がもっと見たい。見たい。
声も、顔も、体も、何もかも誰にも見せたくない。だから…
「お前を閉じ込めれば俺しか見れない。」
「やだよっ…兄ちゃん、これとってよ…」
「…アイマスクはとってやるが、縄はとってやらねーぞ。」
「うあっ…」
視界には兄ちゃんが映っている。いつもと違って、目には光がなく、顔が真顔だ。
いつも、口がまがってて、でもどこか優しい兄ちゃんはどこにいったんだろう。
「俺以外は見るなよ。見たらどうなるか…わかってるよな?」
「うん…兄ちゃん、分かったよ、」
「他の男のところにいくな。名前を出すな。これだけは破るな。」
「兄ちゃん、」
「なんだ?」
「…お腹空いた…兄ちゃんの料理がたべたい」
フェリシアーノは料理してるときに、逃げようと思った。
「いいぞ。何が食べたい?」
「パスタ。兄ちゃんのパスタがたべたい。」
「あぁ、いいぞ。でも」
フェリシアーノは耳打ちをされる。
「逃げようという、考えは捨てろよな。」
フェリシアーノはこれからを悟って絶望した。