さみしがりや 端末の画面に指先を滑らせ、時間を確かめる。ゆっくり歩いて向かっても、約束の時間には間に合いそうだった。
「シロウ。俺はそろそろ」
机の前からゆっくりと立ち上がる。昨日の放課後、専門の業者が来てワックスをかけていったという教室の床はつやつやのつるつるだ。椅子を引く感触でさえ、いつもとは違っていた。
「寮の門限の前には戻るから。心配してくれなくても大丈夫だよ」
「俺はまだ何も言ってないぞ」
困ったように眉をしかめたシロウは、腰掛けたまま軽く腕組みをする。顔を見合わせ、同じタイミングでくすくすと笑いあった。
「じゃあまた夕飯の時に、食堂で……」
俺が言い終わるより先に、キイキイ! と元気な声がした。それに、足首の辺りにもちゃもちゃと何かがくっつく感触。とっさに確かめた足元には、なぜかエビルたちが押し寄せていた。
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