花吐き病騒動吐いた主の命を吸い咲き散らかす梅の花。
胃の腑を、喉を焼く痛みのせいでまるで血を吐いたように広る梅の花。
いくら好きな花でも命をくれてやる訳にはいかん。
病というなら治せばいいと伝手を手繰れば、この病に罹る者は想い人への叶わぬ花の種を腐らしているが故だとか。
──冗談じゃない。
そんなものありはしないと己の心を嘯いてみれば、因果の報いとばかりにまたしても迫り上がる悪心。激痛。散らばる無香の芝桜。
そう、嘯いてると自覚すらある。
例えこの病の果てが死であったとしても、この胸にある花の種だけは根付かせられぬ、水をやれぬとしまい込む。
──俺などに縛られず、飛ぶんだ。やがて明けるこの無窮の空を。
腐りゆく種の徒花を、火に焚べ、土に還し、海に流す。
5390