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    noname

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    noname

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    収拾つかなくなったので途中経過

    出る人
    スタリナ……お嬢様。TRPGじゃない方のスタリナ。
    玟擽 丈(まいばら じょう)……53歳のおじさん。
    アル……メイド長。真面目。メイド4姉妹の長女。
    イスラーイール……掃除担当。あらあらお姉さん。メイド4姉妹の次女。
    ジブリール……食事担当。大食いパティシエール。メイド4姉妹の三女。
    アズラエル……雑務担当。アズにゃん。メイド4姉妹の四女。

    無題「ようこそ、玟擽 丈」
    「……少女? 君が依頼主?」
    「ええ。貴方の得意な暗殺の依頼よ」
    「得意になったつもりは無いけども……相応な報酬が貰えるなら何でもしますよ」
    「ええ、ええ、勿論よ。この殺しが成功すれば一生……いえ、三生は遊んで暮らせる金額を支払うわ。ふふ、三生だなんて人間風情には不可能だけれどね」
    「ほほう、それは喉から手が出る程魅力的な訳だ。それでターゲットは?」
    「私よ」
    「……はぁ?」
    「だから、私よ」
    「……お嬢さん、おふざけで殺しの依頼なんて出しちゃいけないよ。自分で自分を殺せなんて……」
    「アル。『お客様』」
    「はい。お嬢様」
    「ぅどわっっ!?」
    「ほう、避けますか」
    「あっ……ぶねえな! なんだよ!」
    「私は私を殺すために貴方に依頼を送ったのは間違いないわ。だけど私は居場所を伝えただけでこの家に招待はしていない。侵入者を追い払うための正当防衛よ」
    「そうきたか……アンタ中々良い性格してるな」
    「ふふ。ボスは私、アルはただの障害。頑張って私を殺してご覧なさい」

    ​──

    「見てイスラお姉様、アズにゃん。あのおじ様が使ってる茨ってぇ、お嬢様の力だよねぇ」
    「アズにゃんって言うな! まあ、そうね……なんであのみすぼらしいおっさんがお嬢様の力を使っているの?」
    「あら〜? あのお方、左目がお嬢様の瞳とそっくり。もしかして玟擽家の方じゃないかしら」
    「そうなの? イスラ姉よく分かったわね」
    「右目と少し色が違うから気になったの。カラーコンタクトを入れてるみたいね〜」
    「人間のおじ様がアルと互角なんてすごいねぇ。ポップコーンが進むねぇ」
    「あのねぇ……これでもお嬢様の命が掛かってるのよ? いざと言う時私たちがすぐに動けるようにしておかないと」
    「大丈夫よ〜♡アルと互角程度ならお嬢様の首には届かないわよ♡」
    「でもお嬢様はやけに期待してなかった? 殺しの依頼を出す時嬉しそうだったけど」
    「そうね〜……孫に遊びに来てほしい祖母、といったところかしら」
    「そんな人間じみたこと、お嬢様が感じるのかしら」
    「さぁ、どうでしょうね〜。お嬢様本人も分からないでしょうね」

    「っ……!剣が……!」

    「……決まったわね。本当にアル姉に勝ったわあのオッサン……」

    ──

    「あらあら、アルを抑えるなんて。噂通りの方なのね」
    「申し訳ありません、お嬢様……っ」
    「ハァ……ハァ、アンタを殺したら、終わりなんだよな。ふぅ、さっさと終わらせて……」
    「だけど甘いわ」
    「ッ!?」
    (足に痛み!? 一体何が……茨?俺は出してない……じゃあ)
    「遠足は家に帰るまでって誰にも教わらなかった? 油断すると足元を掬われるわよ」
    「クッソ……」
    「はい残念。次を期待してるわ」

    ​──

    「イスラ、アズ。この子を手当てして客室のベッドに寝かせてあげて。ジブルは消化の良いものを用意して。アルは私が手当てするわ」
    「分かったわ」
    「は〜い♡」
    「任せてぇ、とびきり美味しく作るねぇ」
    「あの……お嬢様のお手を煩わせる訳には」
    「主からの労いよ。素直に受け取りなさい」
    「……はい、ありがとうございます」
    「チクッとするわよ」
    「はい」
    「流石は私の子孫だわ。アルを打ち負かすなんてね」
    「ええ……とても強かったです。清く洗練された茨で彼自身もよく鍛えられていました」
    「あれだけ瞳が濃いのだもの。強くないと困るわ」
    「殺し屋というだけあって不意打ちに長けているようでしたから、警戒を強化して参ります。彼はどうしますか?」
    「ここで面倒を見るわ。彼が居れば貴方たちも"穢れ"に触れなくて済むでしょう?」
    「成程。お気遣い、痛み入ります」
    「はい、おしまい。丈が他の殺し屋の子にうっかり殺されてしまわないように守ってあげて」
    「承知いたしました」

    「うわっ、痛そ〜……」
    「これで死んでいないんですよねぇ。お嬢様は手加減がお上手ですねぇ……もぐもぐ」
    「はぁ〜♡私もお嬢様に殺されたいわぁ♡」
    「イスラ姉は本当に変ね……」
    「ふふ、ありがと♡」
    「褒めてないのよ。はぁ〜……まともな姉さんはアル姉だけよ……」

    ​──

    「……ぅ、いって……」
    「起きたわね」
    「……殺すなら殺しなさいよ」
    「いいえ。貴方は私を殺せる唯一の鍵だもの。そう簡単には殺さないわ」
    「殺しに失敗した殺し屋なんて不必要でしょ」
    「貴方の力が必要なのよ。他の子じゃダメ」
    「俺の……?」
    「そういう訳で私を殺すまでの間、ここで働いてみるのはどうかしら? 丁度男手が欲しいと思っていたところだったのよね」
    「……は?」
    「住み込みで1日3食アフタヌーンティー付き。月給は……100万でいいかしら?」
    「いやっ、いやいやいや!」
    「あら、これじゃあ足りなかったかしら……200万ではどう?」
    「そういうことじゃあなくて! なんで俺がここで働くことになってるんだよ!?」
    「わざわざ家からここまで足繁く通って殺しに来るつもり?」
    「ぐっ、それは……道中考えるとそうだけども」
    「それならここで泊まっていけばいいじゃない」
    「いやっ、だからさっき殺しに失敗してる時点で俺はアンタを殺せないって」
    「衣食住は提供するけれど、私の家はホテルではないからタダで泊まらせる訳にはいかないわ。掃除くらいはして貰わないと」
    「話は聞かないわ、勝手に泊めさせられるわ、殺してもらうまで雑用だと……? 1度失敗したんだ。俺はこの仕事を降りる」
    「いいえ、貴方は私を殺しなさい。これは『命令』よ。従わないなら、私が貴方を殺すわ」
    「……っ!?」
    (何故だ……逆らえない……? 逆らおうなんて思えばその思考が砂のように消えていく……!?)
    「アンタ、何をした……!」
    「私からご説明しましょうかぁ」
    「なんだ……?」
    「こんにちはぁ」
    「こんにちは……誰?」
    「ジブリールと申しますぅ。お嬢様に仕える天使ですねぇ。お食事をお持ちしましたからぁ、食べながら聞いてください〜」
    「はぁ。これはどうもご丁寧に……って、天使?」
    「はい〜。この羽もちゃんと動きますよぉ」
    「まだ夢でも見てんのか……?」
    「夢じゃないですよぉ。えっとですねぇ、玟擽様はぁ、お嬢様の茨の魔女の血を継いでいらっしゃるんですねぇ。先程のアルお姉様との戦いで茨の力を使っていらしたでしょぉ、あれは元々お嬢様の力でしてぇ。お嬢様と、その血を強く継いだ子孫しか使えない力なんですぅ。
    ですからぁ、玟擽様は始祖であるお嬢様の『命令』には絶対に逆らえないんですよねぇ。もちろん条件はありますがぁ」
    「そういうこと。お前の足を刺して転ばせたのもお嬢様の茨よ」
    「あっ、アズにゃん。お菓子食べるぅ?」
    「いらないわよ。食べカスが散るからそこかしこで食べるなって何回言えば分かるの?」
    「ごめんねぇアズにゃん。あっちで食べるねぇ」
    「アズにゃんはやめろっていつも言ってるでしょ!!」
    「アズにゃんが怒ったぞぉ、ひぇ〜逃げろぉ、あはは」
    「……はぁ、それで? アンタ、ホントにお嬢様の子孫なの?なんか汚ったないんですけど」
    「お嬢様の『命令』が効いてるのだから本物じゃない?アルを抑えたのをあなたもその目でちゃあんと見たのだし。うふふ、かぁわいい♡生きている人間のおじ様をまじまじと見れるなんて久しぶりだわぁ。食べちゃいたい♡」
    「イスラ、アズにゃん、やめなさい。この方は紛れもなくお嬢様の子孫ですよ」
    「アル姉もアズにゃんって言わないでよ!」
    「アズラエル」
    「……はーい」
    「……」
    (なんであたしが怒られるのよ! って顔をしてるなぁ。そうだとしても俺を睨むのはお門違いだろうよ……)
    「アズ、拗ねないで。アル、可愛いからって妹をあまり虐めてやらないの。嫌われちゃうわよ?」
    「申し訳ありません、お嬢様。それとアズラエルも、度が過ぎました」
    「……ふん、アル姉に可愛がってもらってるのは分かってるからいいわよ」
    「さぁ、丈。冷めないうちにご飯を食べなさい」
    「飯に何か入ってないだろうね」
    「警戒は当然ね。私がひと口食べましょうか」
    「……ふぅ、やっぱりジブルの料理は美味しいわね。どうかしら。これで信用して貰えたかしら」
    「まぁ、アンタが食べたのを見て後ろの子らが何も反応してないのなら大丈夫なんだろうよ。せっかく作って貰ったんだから頂くよ」
    「そうね」
    「……あの?スプーンを離して貰えません?」
    「貴方は怪我人だもの。私が食べさせてあげるわ」
    「お嬢様?そのような世話役は私たちの仕事ですから」
    「私がやりたいのよ。一度子供の世話をしてみたかったのよね」
    「子供の世話って。俺はもう53のオッサンですよ?」
    「まだまだ赤ん坊じゃない。ふー、ふー……はい、あーん」
    「うむっ……美味いな」
    「そうでしょう?もっと食べなさい」
    「自分で食った方が早いんですが」
    「ゆっくり食べないと満腹感が得られないのでしょう?どれだけ時間が掛かってもいいわ」
    「お口に合いましたかぁ。良かったぁ」
    「アンタが作ったのか? えーと、ジブリールさん、だっけ」
    「はい〜、ジブルでいいですよぉ。私は人間の食事が大好きでぇ、食べるのも作るのも好きなんですぅ。こちらに来て初めて見た時はそれはもう感動してぇ……今は私が作った料理でみんなを笑顔にしたいんですぅ」
    「へぇ、良いじゃないの。夢があってキラめいてんねぇ、ジブル」
    「えへへぇ」

    ​──

    「ご馳走さん。美味かったよ」
    「……あら、『お客様』がいらっしゃったわね。丁重におもてなしなさって」
    「承知いたしました」
    「はぁ〜い♡」
    「分かったわよ」
    「お菓子食べながらじゃダメ〜?」
    「ダメに決まってんでしょ」
    「ふふふ、ジブルは本当に人間のお菓子が好きね。……さて。丈、初仕事よ」
    「……『お客様』ってのは」
    「ええ、貴方と同じ殺し屋よ」
    「やっぱりなぁ!?」
    「貴方は怪我をしているから今は片付けだけお願い。殺し屋の子たちが遠慮なく家の中を散らしていくのよ」
    「今の俺は立つのもままならない怪我なんですけど?」
    「茨でなんとかなさい。貴方程の力があれば松葉杖の代わりは作れるでしょう」
    「スパルタかよ……!」
    「さて、私も殺されに行こうかしら。あと5分もすれば『お客様』もお帰りになるから、それまでに広間まで来なさい」

    ​───────

    「いってぇ……人使いが容赦ないなここの……人?たちは」
    「あら、ちゃんと松葉杖を作って来たのね。偉いわ」
    「全身痛いんですが戻ってもいいですかね……ん?声がやけに下から聞こえる?」
    「ダメよ」
    「うぉわっ!? ァ、アンタ、首……っ!」
    「ああこれ……アル、戻して」
    「承知いたしました」
    「私に一太刀浴びせるなんて中々だったわ。ふふ。あの殺し屋の方も貴方みたいに大層驚いていたわね」
    「申し訳ありません。大切なお身体に傷をつけてしまうなど」
    「良いのよ。元に戻るのだし気にしないで」
    「アンタ何をすれば死ぬんだよ……」
    「私の茨で心臓を一突きすれば死ぬわよ。首を落とすだけでは死なないわ」
    「……なるほどね。だから俺は生かされてる訳か」
    「そういうこと。やっと分かったみたいね」
    「それじゃあ……今、アンタを殺そうとしたらどうなる? 俺はもうこの館に招待された身だろ? 不法侵入の正当防衛はもう使えない」
    「貴方はもう私の従者。私を殺そうとすれば従者の裏切りとみなしてあの子たちが殺しにかかるわ。ほら、アルたちは既に貴方の急所を捉えているわよ」
    「っ、マジか……」
    「玟擽様。このままお嬢様に茨を向け続けますか?はいと答えればどうなるかはお察しですね」
    「冗談ですよ。今は殺しません。というか殺せません」
    「賢明な判断ですね」
    「ちなみに逃げ出したら」
    「職務放棄と無断欠勤で殺します」
    「そこは雑だな!? はぁ……俺を殺せる理由は徹底されてるわけだ」
    「ふふ、頑張って私たちの隙を突いてみなさい」
    「ここまで隙が無いと一体何年かかることやら……ところでアンタ、目が青いのは何故です?」
    「この瞳の色の私を殺せと敢えて依頼をしているから、『お客様』の前では瞳の色を変えているの。似合ってるかしら」
    「良いんじゃないですか? 知りませんけど」
    「そこはお世辞でも似合ってると言い切るものよ」
    「普通の人付き合いはしてこなかったもんで。すみませんね」
    「さて、そろそろ片付けないといけないわね。片付けが早く終わればちゃんと傷の手当てと体力の回復をしてあげるわ。早く行きなさい」
    「はいはい」

    「来たわね。これ、片付けておいて。お前がいてくれるなら"穢れ"なんかに触れなくて済むから損は無いわね。さっさとやって」
    「けがれ?うっわ……死体遺棄なんてやったこと無いんですけど」
    「はぁ?お前は殺し屋でしょ?」
    「俺は殺しだけ。片付ける奴は依頼主側にいたんだよ」
    「全くつっかえないわね〜」
    「あと捨てる場所も分からんから手伝ってくれよ」
    「嫌よ。人間の"穢れ"なんて触りたくないもの。普通の動物ですら嫌なのに……」
    「持つのは俺がやるから場所を一緒に来て教えてくれって。1回きりでいい」
    「はぁ、分かったわよ。忘れても教えてあげないから」
    「ジジイになったら教わったこと自体忘れて何回も聞くかもなぁ。ははは」
    「体に書いたら忘れないんじゃない?お前のお得意の茨で」
    「……怖いこと言うなよ」
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