かずみか「ただいま……ん? 返事が来ない」
この時間なら弥伽は家にいるはずだ。部屋で自主練習でもしているなら聞こえなくてもおかしくないだろう。
「あれ、弥伽ただいま……って、寝てたのか」
予想とは裏腹に弥伽はリビングのソファでぐっすりと眠っていた。
部屋のど真ん中で腹を出しながら、無防備にすぅすぅと立てる寝息と寝顔がなんとも可愛らしく、思わず顔が綻んでしまう。
頬を突っつくと薄いながらもハリのあるぷにぷにとした感触が返ってくる。触れられる違和感に顔をしかめながら、
「んゃ…」
なんて声を出す様子はまるで猫みたいだ。
……1人でも眠れるようになったんだな。
頭を撫でると安堵感に包まれた顔をしていた。
ひとしきり楽しんだので声を掛けよう。
「弥伽、服がはだけてるよ。お腹冷やすよ」
「んぅ…」
全く起きない。
「弥伽、そんな薄着して寝てると風邪引くって」
揺すっても起きる気配は無い。
……しょうがない、着替えるついでに毛布を持ってくるか。晩ご飯を作ってるうちに自然に起きるだろうし。
弥伽の体は相変わらず薄く、冷たかった。
部屋は特別冷えているようには感じられなかったが、寝ている間は体温が下がるというからその影響だろう。
手首も細くて、まだまだ標準体型には程遠い。運動をさせながら食事量も増やして筋肉と適度な脂肪を付けさせないと。
残り半分を切った寿命、お互い長生き出来るように。
「今夜は生姜入りのスープでも作ってやるか」
石鹸を付けた手で蛇口をひねった。