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    井幸ミキ

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    井幸ミキ

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    出先でちょっと思い付いた小話
    わりとしもネタ
    ぺけたに流したものまとめ
    🔥💧に見せかけた🏹⚡らしい

    反省した 終電を逃し、遼と伸の暮らす部屋に転がり込むのは、もう両手両足の指では足りないだろう。
    いい加減、二人とも小言や嫌味を言うのも飽きたらしいが、意外な事に、たまに遼がチクリと言ってくる。せめて30分は前に連絡をくれ、急は困る。きっと伸の機嫌が悪くなるからだろう。まったくアイツらは互いが互いファーストでこっちが気恥ずかしくなる。
    確かにちょっと甘え過ぎな自覚はあるので、二人の喜ぶ土産を持参して行くようにしている。遼はあれでウワバミだから、酒ならなんでも喜ぶし、伸はスイーツに弱い。有名処のやつや見目が良いヤツは、口の端が上がるから喜んでいるんだろう。もちろん、こんなもので懐柔されているわけじゃないからね!こんなの買ってくるくらいなら、ちゃんと自分の寝床に帰りなよ!!と小言付だが、可愛いものだ。
    最近は、エントランスホールの来客用インターホーンを鳴らせば、無言で居住区へ続くガラスの自動ドアが開き、そこを通ってエレベーターで部屋のドアの前に立てば、測ったようにガチャリとドアが開く。
    ドアロックまでしっかり締めたのを確認して、手土産を渡すと、くいっと洗面所を示されるのもいつものこと。
    うがい手洗いをしっかりして(これはちゃんとやらないとマジで締め出される)リビングダイニングへ心持ち遠慮して(心外なことにそうは見えないと言われる)入れば、夜食まで用意してくれる面倒見の良さ!
    住民の隠す気の全くない呆れ顔顰め面溜息さえ気にならなければ、これほど快適な宿はない。もちろん俺は気にしない!

    そんな風に思っていた時が、俺にもありました。

    俺、これからはきちんと自宅へ帰るよ…悪かった、反省してる。

    ああ…俺はこのモヤモヤを、どこに、誰に、吐き出したら良いんだ………


       ◇◇◇   ◆◆◆   ◇◇◇


    ―――んっ、やぁ、ダメだよ…!!
    ―――なんで?
    ―――なんでって、だって……
    ―――だいじょうぶだよ、当麻は一回寝たら起きない
    ―――そ、そうだけど…でも……
    ―――ここ、もうこんなになってるのに?
    ―――…知らないっ
    ―――なぁ伸、おれは正直言ってもう限界だ
    ―――でも…
    ―――気になるなら、ずっと口をふさいでてやるから…
    ―――ん…んん……あ、ん……


    えーと。
    悪いな、たまには目が覚めるんだよ…夜中に行きたくなると面倒くさくて起きるか朝まで我慢するかの戦いになるから、寝る前にはトイレに行くようにしてるんだよ…今夜はその前にちょっと寝落ちしちまったから…。
    終電を逃して転がり込んだ遼と伸の部屋。
    夜食まで出してもらって満腹になってちょっと横になったらそのまま寝入ってしまったけど、尿意を感じて、リビングを出てトイレへ向かった俺の耳に届いた睦言。
    何で、寝室の扉がちょっと開いてるんだ!?
    チクショウ! イチャイチャしやがって!!
    じゃない、俺がお邪魔虫、なんだよなぁ…どうする俺!このままトイレへ行ったら、起きていることに気付かれる!いや、しかし、別に悪いことをしているワケじゃあない。生理現象だ、それくらい許されるだろう!!

    俺は、我慢することを選択した。

    遼の、微妙に寄った眉と口数の少なさを思い出したからだ。
    アイツ、あれ、不機嫌だったんだな…。くそぅ、前はもっとはっきり仏頂面するヤツだったからすっかり油断した。
    俺は、二人との会話を思い出した。それぞれの会話は別個だ。断片的に得た情報を繋ぎ合わせると…
    伸は昨日まで出張で、その前は遼がカメラマンの先生のアシスタント仕事でスタジオに缶詰で、つまり…二人きりで過ごす夜は2週間ぶり…!!
    そこに、俺が転がり込んできたわけだ…。

    それにしても遼、がっつくヤツだったんだな。

    伸は普段あれだけ面の皮が厚いわりに繊細なんだな。

    俺は、すごすごとリビングへ戻った。


       ◇◇◇   ◆◆◆   ◇◇◇


     それでまぁ、結局寝付けなくて、例の戦いにも突入した。出来るだけ引き延ばしたんだが…やっぱ生理現象には勝てない。いやほら、人んちで粗相するワケにはいかんだろ。
    一応気まずいなぁとも思って、出来るだけ気配殺して行くだろ。そうするとさぁ!ドア、開いたままなワケだよ。


    ―――りょぉ…だめぇ……きちゃうよぉ、も、おねがぃ……
    ―――…うん、しん、いいよ、ほら、イって? かわいくイクとこ、みせて?
    ―――やだぁ…むりぃ…りょお…たすけ、て…
    ―――ん~うん? あぁ、こっちではイケないのか。はぁ…あぁ…ほんとかわいい…
    ―――ああ!!…っりょお…!!
    ―――しん、ね、どうしてほしい? おしえて?
    ―――やぁ、いじわる、しないでぇ、いつも、みたい、に、してよぉ…
    ―――…いつも、みたい、って、こうっ?
    ―――あっ、あん!ああーーー!! だめ、だめ、ちが、うよぉ…
    ―――言って、しん…ナカ、どこがいいの
    ―――……ぉく…
    ―――ん~?
    ―――おくぅ……とんとん、してぇ……
    ―――いいよ、しん、奥、いっぱいしようなぁ…!!


    俺は、聞く気は全くなかった。断じて。これっぽっちも。
    でも、ほら、真夜中の廊下って、静かで音もよく響く。
    漏れ出てくるんだよなぁ、水音とか、打ち付ける音とか、もろもろ。
    でも俺は断行した。まぁ、夢中で気付かなかったみたいだな、水洗の音も。
    すっきりして俺も寝られたし、多少ムラムラしたような気がしないでもなかったが、トイレの帰りに見たアレが恐ろしくてすぐに縮こまったからな、問題ない。ドアの隙間から、ちらっと。目が合った気がして。つり目と。気のせいだと思うんだが。翌朝、遼も伸も普通だったし。
    まぁ、伸はちょっと気怠そうだったが。そのせいか、いつもの完璧な和朝食じゃなくて、パン食だったけど、俺はパンも好きだし、オムレツなんて相変わらず絶品だった。

    で、俺は反省したワケよ。

    あそこは、遠恋してるようなヤツが行くとこじゃない。

    「ということで、むちゃくちゃ逢いたくなった」
    「…なにが、ということだ」

    俺のツレナイ恋人は、相変わらずぞくぞくするほど鋭く俺を射抜いてくる。
    コイツの美貌は、衰えるどころか、益々鋭く雷のように苛烈に極まっている。
    紫水晶よりも澄んで、触れれば凍り付きそうな程温度の低い色合いの瞳が、熱を帯びる瞬間を思い出して、ぞくりとする。

    「いやぁ、ちょうどこっちの大学の客員教授にって、声が掛かってさ」
    「公私混同をするな」
    「してない、してない、マジだって! 学科新設するから人手がほしいって声掛かったんだよ」
    「ふん。まぁ、猫の手よりはましだろう」
    「あーひどい、これでも俺、期待のホープよ?」
    「せいぜい迷惑を掛けぬよう励むのだな」
    「もちろん、誠心誠意、務めさせていただきますよ~」

    ふん、とそっぽを向いた恋人の、耳朶がほんのり染まっている横顔を眺めて、心の中で舌なめずりする。
    俺も、久方ぶりにあった恋人を、あんな風に啼かせたいと思ったって、バチは当たらないだろう?
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