幸せな夢を断つ話 六「未? 大丈夫なの?」
目の前で膝を着き、動かなくなった少女に、月待依宵は狼狽えながら手を差し出す。それは、生前の彼女そっくりだった。知り合いであろうと無かろうと、彼女は手を差し伸べる。そういう人だった。
「未、具合が悪いなら、今日はもう帰ろう?」
「……」
返事はない。聞こえていないのだろうか。
「ねぇ、ひつ」
「先輩」
鋭い声が耳に届く。
「月待先輩。──月待依宵、先輩」
「……なぁに?」
突然フルネームで自分を呼ぶ彼女に困惑しながら、依宵は返事をする。
「貴女は、もう、いないんですね」
「……」
依宵は、不意を突かれたのか、声を出せなかったらしい。
「ならば約束通り、貴女を弔わなければ」
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