かえひよ夢を見た。誰よりも早く水を切り裂き先をゆく大きな影に、どれだけ手足を動かしても俺は届かない。どうして、なぜ俺は勝てないのか、答えは出ないままただ水底に沈んでいった。
「夢見悪りぃ〜……」
ため息を吐きながら身体を起こし水を飲みに行こうとすると、隣からゴソゴソと動く気配を感じた。
「ん……おはよう、早いね」
「あぁ」
「……どうしたの?朝からそんな険しい顔して。怖い夢でも見たの?」
「べつに、なんもねえよ」
「なんもなさそうに見えないけどね」
目を覚ました日和が楓の顔を見るなり、ベッドに寝転がったまま頬に手をつき話しかけてくる。
そんな辛気臭い顔でもしてたかと思ったが取り繕う気にもなれず、かと言ってあまりいう気にもなれなかった。誰にだって弱みは見せたくないものだ。しかし、こいつなら……そんな思いが脳裏に過ぎる。
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