レイくん戦俺は軽傷で済んだが…
ライトは重症
傷口からは止めどなく血が流れる
血は見慣れているはずなのになんでこんなに焦るんだ…?
「ライト!ライト!!」
いくら声をかけても返事はない
返ってくるのは浅い呼吸だけ
血も止まらないし顔色はどんどん悪くなっていく
「嫌だ…嫌だ……!ライト!!」
頭の中が混乱してぐちゃぐちゃになって俺は焦った
落ち着け…落ち着け……!
こんな時何をすればいい
頼れるあてなんて俺にはいないどうすればいい…!
「……ショウさん…ショウさんに頼るしか…!」
そう思えば俺はすぐにライトを抱えて全力で走った
疲れなんて知らない
息切れなんかも知らない
ひたすら目的地まで全力で…
走っている間もライトは苦しそうだった
顔色悪くなっていくしどんどん息が聞こえなくなってくる
そんな状況は俺の足を速めた
「どうしたのそんな急いで…」
「ハァ、ハァハァ…た、助けて!!
ライトが!ライトが!!」
「!?
と、とりあえず落ち着いて?
君も怪我してるんだからまずは自分の心配を…」
「俺なんかよりもライトが先!!」
「わ、分かった1回ライトくん預かるよ?」
「…うん」
刑務所についてすぐにエムさんに会った
何があったか事情を話す前にライトの事を話した
ライトをエムさんに渡す時
エムさんは酷く怒った顔をしていた
そしてライトが連れていって数分
エムさんが戻ってきた
「とりあえず君も治療するからついてきて」
「ライトは…!?」
「今ショウくんに診てもらってるよ」
「……」
「何があったか話してくれる…?」
「…実は……」
なにがあったか話しながらも
頭の中はライトの事でいっぱい…
お願い…無事でいて……!
ライトが襲われて眠ってからもう4日…
目を覚ます気配は未だない
本当にこのまま眠り続けてしまうのか、植物状態になってしまうのか
心の中は不安でいっぱいだ
俺が何もできなかったせいで大切な人がいなくなるのは嫌だ
「ライト…お願い、死なないで…!」
祈ったところでライトは目を覚まさない
必死に手を繋いで問いかけても…いくら涙を流しても……
眠り続けるライトに何もできることはなかった
もう4日も寝ている
頭の中に過るのは最悪の事態ばかり
「大丈夫だよ、ライトくんなら戻ってくるよ」
「お前だけおいていくわけない」
見舞いに来た奴がそう言ってくる
でも俺はライトの状況を全部聞いている
「全部聞いてんだよ…
いつ死ぬか分んねぇのに、植物状態になるかもしんねぇのに
そんな淡い期待持たせんな…!」
「…」
「……悪ぃ、帰ってくれ」
「いや、俺らも悪かった…
ここに差し入れ置いとくからな」
「…」
関係ないって分かっているのに他の奴らに強く当たってしまう
自分に余裕がないことが分かる
この4日間
飯は取ってないし睡眠だって取ってない
いつ目が覚ますのか
いつ息を引き取るのか
分からないし危ない状況だと言われた
そんなこと言われたら飯を食う余裕も睡眠を取る余裕もない
何もできない自分が無力でどうしようもなく嫌気がさす
なんで自分には何もできないんだ…!
…そう、自問自答するばかり
「ライト…お願いだから、お願いだから…!帰ってきて…!!」
ライトの手を握って止まることのない涙をそのまま流す
ライトは未だ目を閉じて静かに眠っていた
5日経った今日…
未だ目を覚まさないライト
「こっちでは最善を尽くしたから
あとはライトくん次第ってところ」
「……」
「…まぁそんな思い詰めんなよ
確率はわかんねぇけど帰ってくる確率だってあんだから
じゃ、点滴変えたし俺戻るから
なんかあったらすぐ呼べよー」
「ん…」
また2人の空間に戻る
帰ってくる確率…
結局分からないなら希望なんて持たない方がいい
でも帰ってきてほしい…
「…ライト……」
小さく呟いて強く手を握った
手は暖かいような冷たいような…
このまま残りわずかな生気を失ってしまっても
おかしくないような感覚がした
不安な気持ちでいっぱいになりながら
そのまま時間は過ぎた
_夕方_
もう外は夜になる準備を始めている
空は夕日で赤く染まっていた
「今日も目覚まさないのか…」
もう目を覚まさなくて5日目も終わろうとしている
5日目も終わろうとしている
そろそろ俺の心も限界を迎えそうだ…
「ライト…目…覚まして……?
そろそろ俺しんどいよ…?
もう泣きすぎて目だって痛い…」
ちらっと見た窓に反射して映る自分は
目の下にはうっすら隈ができ
それに重ねるように泣いた跡が濃くできていた
「ハハ…みっともねぇ顔……w」
自分の顔の酷さを見た後
俺はまたライトに視線を戻す
相変わらず静かに眠っていた
ライトの頬に自分の手を重ねて優しく触れた
綺麗だった肌にはまだ痛々しい傷が残っており
頬についているガーゼには血が滲んでいた
呼吸は安定しているが
いつしなくなってもおかしくないような弱い呼吸をしている
怪我をしていない所を優しく撫でる
「…ライト……」
そう呟いてはまたひとつ涙がポロリと零れた
もう、心が限界を迎え始めている…
その時だった
「……」
「ライト…!?」
ライトは静かに目を開けた
キョロキョロとし
ここはどこだとでも言いたいようだった
「ここ、ショウさんのところ…!」
「…そ、うか……」
「良かった…ホントに良かった…ッ!!」
「…泣く、なよ……」
「ッ…だって…だって……!」
「……ただいま…けい…」
「!……おかえり、ライト…ッ!」
ライトは起きたばかりで
力の入らない手を俺の方に伸ばしてきた
その弱々しい手を両手で包み込むように掴んだ
目を覚ましてくれた嬉しさで涙がボロボロ溢れる
そんな俺を見てライトはほんのり笑っているように見えた