会いたい気持ち サラサラでツヤツヤだ❤️
美容室帰りの髪の毛の指通りが嬉しくなった私は、唐突に誰かに見て貰いたい!と思った。
もちろん、誰かというのは、お母さんとかではなくて……頭に浮かんだ人は……。
きっと優しく髪を撫でて、「ホント…カワイイよな」とかって言ってくれる、はず。
約束はしてないけど、行っちゃおうかな…。
まだ2回しか行ったことがないうろ覚えの道を、小走りで急ぐ。
ピンポーン
部屋の前で少し乱れた前髪を整え、チャイムを押す。
中からの応答はなかった……。
七ツ森くん、いないのかな……。
新作発売前だし撮影かも、連絡もせずに来てしまった自分の浅はかさを後悔しつつ、カバンを探る。
スマホがない……。忘れてきちゃったんだ。
うわ~ん、私のバカバカ。
連絡も出来ないよー。
七ツ森くん何時ごろ帰ってくるのかな。
もうすぐかな、…待っててもいいかな。
来たときはまだ明るかったのに、あっという間に陽が傾き、辺りが暗くなって来てしまった。
うーん、やっぱり連絡もしないで突然来ちゃうのは無謀だったかも、暗くなって来ちゃったし、今日は諦めてもう帰ろう。
来たときはウキウキして小走りだったのに、帰りの足取りは重い。……会いたかったな。
閑静な住宅街は街灯も少なく、暗い道をトボトボと歩く。
道の向こうを走る車のライトがじわっと滲む。
なんで約束してなくても会えるって思ったんだろ。
大きな通りと交差する曲がり角で、急に腕を掴まれる。
「美奈子、な、どっ、こんな遅っ、」
「あ、七ツ森くんだ!会えて良かった」
会えた嬉しさで涙が瞬間的に引っ込んだ。
単純で恥ずかしい……。
ちょっとだけ髪を切ったから見て欲しくって、と言った私に、七ツ森くんは自分のマフラーを外してぐるぐる巻きにした。
待っている間、寒さはあまり感じなかったけど、確かに身体はちょっと冷えてしまっていた。
「日中暖かかったから、へへ、薄着だったー」
そう笑った途端に、急に目の前が真っ暗になった。
そして身体がぽかぽか温かくなった。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、頬なんかちょっと熱いくらい。
「七ツ森くん?苦しいよ?」
「そりゃー全力で抱き締めてマスから」
七ツ森くんなんかいい香りがする。
「…たく、いつから、いた……冷たくなってる」
今はもうホカホカだよぉ、そう答えた私の頭を軽く撫で、
「遅いから送る」と言うと、私の手袋を片方だけ外して、繋いだ手を大きなポケットに迎え入れてくれる。
「七ツ森くんって温かいね❤️」と言うと、怒ったようにそっぽを向いて、
「マジで、こーゆーの心臓に悪いから、止めて。約束忘れて待たせたのかと思ったし。泣いてるのかと勘違いしたし、マジで、ビビった。なんでもなくて、ホント良かったデス……あと、髪型、めちゃめちゃカワイイ……」と、欲しかった言葉と一緒にキスが、降ってきた。