寒い冬には、暖めて。 校舎を出ると、冬の寒さが身に染みる。現役時代はハーフパンツでコートを駆けていたことが信じられない。まるで遠い昔のことのようだ。隣を歩く忍足にそう告げれば、年寄りみたいやなと言われてしまうだろうか。
そんなことを考えていると、隣から大きな悲鳴が聞こえてきた。
「寒っ!! 信じられへん。なんちゅう寒さや……」
「もう十二月やからしゃあないわ。心頭滅却すればなんとやらやで」
「銀みたいなこと言うなや。気持ちでなんとかできたらとっくにやっとるわ」
「スピードスターが弱気やなぁ。子どもは風の子やで」
「そら金ちゃんだけや。スピードスターはもう大人やからあかん」
十四歳も子どもだろう。そう喉まで出かかった言葉を我慢した。寒い寒いと震える忍足は、寒がる様子を全く見せない白石のことを恨めしく思っているようだ。言葉にしても変わるものではないから口にしないだけで、白石だって寒くないわけではない。
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