占い 伊作くん目線朝の占いは母さんが好きで、支度をする時に
流したまま聞くことが日課だった。
今日も元気な女性アナウンサーが占いの発表
をしていて、「では、今日の一位と最下位の発表です。」
と言う言葉が耳に入りふと気になってテレビを見る。
「おめでとうございます。
今日の一位は水瓶座の方です!」
爽快な曲とともにクラッカーがなる。
「(なんだ、自分ではないのか。)」
少し期待してた為、肩を落とす伊作。
また支度をしようとすると、
「〜今日の最下位は残念。牡牛座の方です!」
「え?(嫌だな〜聞かなければよかった)」
「今日は何をやってもダメダメな日です。諦めてください。」
「え!?ちょっと!!そんな占い結果ある!?ちょっと!!」
思わず薄型テレビの上を掴んでガタガタ揺らし涙目で訴える伊作。
「今日は残念な日ですが〜」
続きをアナウンサーが言おうとしたが母親の言葉で聞こえなかった。
「伊作、何やってんのよ!テレビ壊れるでしょうが!」
「あ、ごめん、ちょっと衝撃すぎて・・・」
「もう、早くしないと遅刻するんじゃない?」
「え!?あ!そうだ!行かないと!」
占いを全部見ても間に合う時間なのだが、親友の留三郎に
貸す予定の本がある為少し早めに出る予定だったのだ。
「行ってきまーす」
バタンと扉が閉まる音がキッチンへ届き、やれやれと母親が誰もいなくなった部屋をぐるりと見渡す。
「あら?」
そこには伊作が留三郎に貸す予定だった本が置いてあった。
「お前・・・大丈夫か?」
親友のずぶ濡れの頭、ブレザーではなく
ジャージ姿の伊作が教室に入ってきて、
びっくりした留三郎が朝の挨拶をせずに聞いて来た。
「留三郎〜(ぐすん)」
「(今日は一段と付いてないなコイツ・・・)とりあえず座れよ・・・。」
「朝、天気いいからだと思うんだけど、
水撒きしようとしてた所に僕が通ったみたいで
思いっきる頭から水かぶってさ、めちゃくちゃ謝ってくれて服を貸してくれるって言ってたんだけど断ってさ、
んでカバンの中に留三郎の貸す本が入ってるから、確認したらなくて、急いで戻れば間に合うかも!って、丁度服も変えれればと思って戻ろうとしたら、なぜか大型のわんちゃんを散歩してたおじいさんがいて、
そのわんちゃんと目が合ったら勢いよく僕の方に来て追いかけて来て、
あ、ちなみにおじいさんはわんちゃんに引きずられてた…。
んでうまく巻いて、学校に着いたら今度はどこからか飛んで来たプリントが顔に張り付いて、頭が濡れてるからプリントはぐしゃぐしゃになるし、
見えなくて壁にぶつかるし・・・。
それを見た山田先生がジャージを貸してくれたんだ・・・」
「伊作、無事に着いてよかった。」
留三郎の目には涙が溜まって無事を心底喜びウンウンとうなづく。
「本はいいよ、楽しみにしてたけどまた別の機会に
貸してくれ。」
ポンポンと肩を叩き慰める留三郎。
「ごめんね・・・」
「いいって、俺たち友達だろ?」
「うう・・・ごめん・・・。」
「とりあえず学校の中にいればそんな危ないことなんてそうそう起きないだろ。」
「そうだね・・・」
普段からついてない伊作だが、ここまで連続で不運が続くのは。
「(やっぱり占いのせいかな?)」
「お前、わざとではないよな?
もうこれが汚れたら全裸で帰れ。」
「すいません・・・。」
合計で3枚ジャージを借りてダメにしてしまい、笑顔の山田先生のおでこに青筋が見える。
教室に戻る途中に泣きそうになってしまいため息がでる。
「はぁ・・・今日は本当についてない。」
友達のジュース、トイレの故障、お弁当のスープ、etc…こんなに汚すことなんてないというくらい汚すので、
先生もわざでは?と言われたわけだが・・・。
「占いかなぁ、見なきゃよかった・・・。」
自分自身でもこんなについてないことが起きるのはなかなかないので嫌になる。
でもあと一時間だ、これさえ乗り越えれば・・・。
席に着くとタイミングよく携帯のバイブが鳴り出す。
「ん?」
携帯を見ると「雑渡さん」の文字。
「(え!)」その文字に心が踊り出す。
なにぶん雑渡の仕事もなかなか忙しくて連絡がなかった状態だったのだ。
急いでメッセージを見ると
「今日学校終わった後に会えるかな?」
と来ていた。
「もちろんです!」
と打ちたかったが、今日の出来事を振り返ると一瞬ためらった。
もしかして、雑渡さんにも迷惑をかけるかもしれない。
そう思うと果たしてそれはいいのか・・・。
返信しない間にまたピコンとメッセージ
「君に会えなくて寂しい。」
「っ!」
その文字を見た瞬間に顔が赤くなっていくのがわかる。
今までの災難や不運が霞んでしまうくらい幸せな気持ちが身体に広がっていく。
「やばい、めっちゃ幸せだ・・・」
誰にも聞こえないように小さい声で気持ちを漏らす。
「今日は残念な日ですが、意中の方からのメッセージが届くかもしれません。そのメッセージは貴方の憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれますよ!では、行ってらっしゃーい!」