「ケープ振り合うも多生の縁」トロ君、夜の楽園お一人散歩(機能制限の解除・戸惑い)寝付いたレヴに安堵する、トロ。
寝たふりをしていた目を開き、大好きな海の星を眺める。
ゆっくりと静かに上下する胸板、滑な手足、窓から差し込む月明りにてらされて艶を増す唇。
お腹の底に鈍く苛烈な熱が蠢きだす、体もコアもはじけそうなほど暗い衝動が駆け巡る。
無意識のうちにまたがり、大切にしたい傷つけたくない星を見下ろしていた。
寝床に敷かれた布を加減なく握しりめる。
止めなくてはこの衝動を、消してこなくてはこの蠢く熱を。
じゃないと大事な宝物を自分で壊してしまう。
この苦しみを何と呼ぶかはわからない、だけど良くないモノだという事だけはわかる。
止まっていた息をすべて吐き出し、炉に新しい空気をめぐらす。
ふらつきながら”家”になったそこから抜け出た。
ドアの閉まる音で意識が浮上する。
身を起こして窓を覗き、夜に消えていくトロの姿を見送る。
気怠い体を起こし、ケープを羽織り玄関に腰を下ろす。
今度こそもう帰ってこないかもしれない彼を待つのが習慣になりつつあった。
おいかけることもできず、ただただ待つ自分に嫌気がさす。
それでもあの若い狼が自分に縛られず悠々と空をかける姿をおもえば、これが最善だと言い聞かせる。
自分の体に渦巻く感情をどうにかすべく、トロは楽園の島々にきていた。
いつも何か嫌なことがあると楽園の島々で海に甘えている。
今はこの鈍い熱を、汚くて暗くて悲しいそれを全部全部洗い流したくて、海に身を投げる。
全て振り払おうとがむしゃらに泳ぎ、身をさきそうなそれを吐き捨てるように咆哮する。
朝焼けを背に、疲れ切り猟犬に戻った彼が姿を現す。
滴る潮をそのままに驚いて所在なさげに笑いかけてくる。
トロ「…朝ごはん、魚がよくて」
レヴ「そうか、浴び直してからはいれよ」
言いながら台所へ向かう
湯をわかしながら、戻ってきたことへ安堵と自分の身勝手さに嫌悪する。
潮を流した真水を滴らせしょぼくれた番犬が家に帰ってきた。
よく乾いた布で頭を乱雑にふいてやる。
なされるがままに見下ろしてくる瞳は憔悴が色濃かった。
レヴ「あとは自分でやれ、これ飲んで寝ろ。今日は昼過ぎてからだ。」
熱いお茶と着替えを机において寝室へ戻る。
ドアは閉めずに、薬を呷り寝台に身を任せる。
しばらくしてからおずおずと手を握られる感触がし、隣に温かさが灯る。
疲れ切り寝落ちたともし火をそっと握り返す。