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    namo_kabe_sysy

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    お題「紅葉狩り」
    いろどりさい終わりくらいの捏造話。アル空前提ですがあんまカプ要素ないです。くれーちゃんが元気な回。

    #アル空
    nullAndVoid
    ##アルベドワンドロワンライ

    いちばん綺麗なかたちをあなたに 容彩祭での仕事も終わり、あとはモンドに帰るだけとなったアルベドは、クレーとともに稲妻を巡っていた。
     祭りの間あまり構ってやることができなかったクレーに、やっとまとまった時間が取れたから遊びに行こうかと手を述べると、幼い彼女は頬を紅潮させ、元気にその手を握り返してくれた。
     そして本来はアルベドが先導する予定でいたちいさな手のひらは、思いのほか強くアルベドの手を握り、そのまま全力で走り出してしまう。はしゃぎっぱなしのクレーに半ば引きずられるようにしてやってきたのは、楓の木が連なった、緋木村にほど近い場所だった。
     水の落ちる音を耳にしながら、一度アルベドの手を離したクレーは、燃えるような赤色に染まった葉を揺らす木の下へ進んでいく。アルベドも数秒遅れて、小さな背中に続いた。
    「アルベドお兄ちゃん、見て見て! ここ、赤い葉っぱがたくさん!」
    「そうだね。離島でもたくさん見たけれど、ここはまた違った趣がある。……綺麗な色だ」
     船が出入りする離島では、入出国に関するやりとりもあってか、波止場からすでに活気が伝わってくるようだった。その島のあちこちにも、いま目の前にあるような木々はたしかに多く存在していたが、この場所にあるものは静けさも相まって、紅葉はどこか寂寥を感じさせる色合いに見えてくる。
     そよぐ風で、揺れた葉の何枚かが宙へ漂う。ちょうどアルベドの近くまで舞い落ちたそれを軽く掴むと、クレーは興奮したようにその場で飛び跳ねていた。
    「クレーも! クレーも落ちてくる葉っぱつかまえたい!」
    「そんなことしなくても、足元にたくさんあるのに?」
     それか代わりに枝から取ってあげるよとまで言っても、クレーは首を横に振るばかりだ。アルベドお兄ちゃんみたいにするの! と気合をいれている。
     何がそこまで彼女の心に火を付けたのかわからなかったが、そこまで言うならサポートするよと、アルベドは地面に擬似陽華を咲かせた。
    「少しでも地面から遠いほうが、落ちる前につかまえやすくなると思う」
    「わあ、ありがとう! えへへ、待っててね、アルベドお兄ちゃん! いちばん綺麗な形をつかまえるから!」
     意気込んだクレーはひらひら風に乗る紅葉を凝視して、選別しているようだった。手を伸ばしかけたと思ったら、ちょっと違う……と、眉根を寄せたまま引っ込めたりを繰り返す。そしてようやく「見つけた!」と瞳を輝かせた彼女は、張り切って両手を伸ばし葉をつかまえて――アルベドの咲かせた花から落ちそうになった。
    「クレー!」
     そばで見守っていても冷や汗が流れた。クレーを抱きとめたアルベドは、ぎゅっと目を瞑っている少女に怪我がないかをなるべく優しく問いかけると、ルビー色の大きな瞳はゆっくりと姿を見せてくれる。
    「ご、ごめんなさい……」
    「いいよ、それよりどこか痛いところはないかい?」
    「大丈夫!」
     明るく答えたクレーに嘘はないと安堵したところで、抱えた彼女をそっと下ろしたアルベドの前に、鮮やかな赤に染まった葉が差し出された。
    「クレー? これは……」
    「アルベドお兄ちゃんにあげる!」
    「でもそれはキミのものだろう?」
    「ううん。最初からアルベドお兄ちゃんにあげるつもりでいたもん。クレーのじゃなくていいんだ」
    「それはどうして……?」
     行動の理由がわからず膝を折り、クレーの視線に合わせて問いかける。するとクレーは「栄誉騎士のお兄ちゃんが言ってたの」と口を開く。
    「アルベドお兄ちゃん、お祭りでいっぱい頑張ってくれたって。すごくすごーく助けられたって。だから、今日クレーが見つけた綺麗なもののなかに、アルベドお兄ちゃんに渡せるものがあったら、プレゼントして欲しいって。栄誉騎士のお兄ちゃんもお礼をしたかったんだけど、任務ですぐに時間がとれないから、クレーに任せたいんだって話してたんだ!」
    「……空が?」
    「うん! だからこれは、栄誉騎士のお兄ちゃんとクレーの、ふたりからのプレゼントだよ!」
     改めて差し出された一枚の葉を、言われるままそっと受け取る。
     所々に穴が空いているものの、輪郭に欠けはほとんどない。褪せた黄色と茶を混ぜた赤がグラデーションを描くその一枚を、アルベドは両手で包み込んだ。
     まさか、こんなサプライズが待っていたなんて。一体いつの間にそんな会話をしていたのだろう。彼とはこの地でもそれなりに一緒にいたけれど、全然気が付かなかった。
    「――ありがとう、クレー。プレゼント、大切にするよ」
     それから空にもお礼をしなきゃと微笑むと、紅葉に紛れてしまいそうな赤い服を纏った少女は、嬉しそうに、それでいて誇らしげに笑顔を返してくれるのだった。
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