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    rinkokonoe

    @rinkokonoe

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    rinkokonoe

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    とても短いです。
    タンブラの衝撃で書きました。
    おたでみかんを食べている塚橋のお話です。

    溶けていく暖かい部屋の中で、暖かなこたつの中に居る
    昔、とても寒いところにいたような気がするのはなんなのだろうか
    時折見る夢の中に誰かの腕に縋る様に、引き寄せる様に、どちらも繰り返し行う夢
    思い出すと、体が冷たくなる
    暖かなこたつの中に入っているのに
    「太郎?」
    正面に座っている和さんの声に、体の熱が戻ってくる気がする
    「あ、すみません」
    「また、あの夢か?」
    冬になると、出てくる夢は酷く冷たくて悲しい
    「すみません、大丈夫です」
    「それなら良いが」
    ほら、と温かなお茶を注いでくれる和さんが居る
    今は温かい、暖かい
    「ありがとうございます」
    ず、と一口飲むと体の中が溶ける様に感じる
    みかんも、と和さんが大きな掌で皮を優しく揉んでから、剥いてくれた
    和さんが口元をちょんちょんとつついてきた
    口を開けると、みかんが優しく放り込まれた
    柔らかな皮を噛み締めると、じんわりと果汁が溢れてくる
    甘い、染み込んでいく、心と体にじんわりと
    「甘いか?」
    今年のみかんは当たり年らしいぞ、そう言って和さんが一房自分の口に入れて美味いなと言っている
    柔らかいみかんと、柔らかな表情をした和さんが重なる
    何かが溶けるような気がした
    「ん、ほらもう一つ」
    「ありがとうございます」
    今度のみかんも、甘くて美味しいものだった
    ああ、今は暖かい、こたつで温んだ掌を和さんの掌に重ねてみる
    「こら太郎、剥けないだろう」
    「今、こうしていたくて」
    とくん、とくんと脈が感じられる
    今度は両手で片腕をぎゅっと握ってみる
    生きている、俺達は今生きている
    溶けていく、柔らかく心と体の何かが
    「なんだか、こうしているとあの夢を忘れられそうです」
    「なら、夜寝る時もこうしていよう」
    抱き合っても良いし、手を握り合うでも良いぞ
    そう言って笑う和さんの声が耳から心臓まで届いた気がした
    ああ、溶ける、溶けていく
    後少し残った塊は、きっと何日か経ったら無くなるかもしれない
    幸せを噛み締めながら、俺は剥いてもらったみかんを食べる
    じんわりと染み込んでいくみかんを咀嚼してから飲み込むと、おかわりをお願いした
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    recommended works

    佐伯雛子

    DONEサカノーエさんと姪っ子がきゃっきゃしてるところが書きたかっただけの話です。捏造純度100パーのサカノーエさんの姪っ子が登場します。下記姪ちゃんの設定です。7月の本にもこの子は登場します。こんな感じの姪ちゃんとサカノーエさんの話をいつか本にしたいです。言うのはタダ。

    メイちゃん=庚二の兄の娘(ひとりっ子)私立幼稚園に通っている。ギフテッドな三歳児。コウちゃん(高3)が大好き。
    メイちゃんとおままごと【現パロDKノ上君と姪ノ上ちゃんss】「あなた、そこのお皿を取ってくださる? ……ねぇ、あなたってば!」
    「ん? あだっ」
    「聞いてます?」
    「き、聞いてなかった。……あー、何だ? これ?」
    「そう、それよ。……んもうっ、本当に困った人ねぇ」
    「あー……どうもすみませんでした」
    「分かればいいんです。分かれば」

    何故俺は今母にそっくりな喋り方をした三歳児に“あなた”と呼ばれているのだろうか。

    「聞いてなかったのは俺が悪いんですが、物を投げるのはよくないよ。“メイ”ちゃん」
    坂ノ上庚二はいつの間にか眼前で鼻息荒く仁王立ちしている幼女に皿を手渡した。幼いながらにも坂ノ上家特有の顔をしたその子は制服の上から纏ったエプロンの裾を整えながら、満足げな笑みを顔いっぱいに浮かべている。その笑顔は何とも既視感を感じずにはいられなかった。
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