やまぶき高校デビューまでの話小さな花を彩音に渡す。彩音は顔にどろをつけながら、キョトンとしたを向けていた。何か言わなきゃと思いつつも口からは何も出てこず、彩音の小さな手の上に握りしめすぎてしなっている花を渡す。「ありがとう!」と嬉しそうに花を受け取る彩音を見て、僕は
「風吹ーーー!!!起きなさーーーーーい!!!」
「っ!?だッ、いっっってぇえええーーーーー!!!」
俺は母さんの大声に驚いて、ベッドから落ちた。
「あぁ、だから今日は来るの遅かったんだ」
そう言いながら隣を歩くのは小さい頃からの幼馴染。あれからダッシュで支度をして登校するべく待ち合わせ場所に行けば、中学の制服に身を包んだ彩音が待っていた。
「めちゃくちゃいい夢見てたから、余計びっくりしたんだよ!」
「やまぶきもだけど、やまぶきママも結構声通る方だもんね。そういえば、夢ってどんな夢見たの?」
「…………忘れた」
「嘘だぁ!そういう時のやまぶきは絶対覚えてる!」
「忘れたもんねーーー!!!」
中学生2人()きゃいきゃいとじゃれていれば、徐々に周りに同じ制服を着た生徒たちが登校する道へとぶつかった。それに気付いたやまぶきは急に声を落とし、少し長い前髪で目元を隠した。
彩音もその行動の意味を理解し、鞄を持ち直す。
「行こっか」
「うん」
「やまぶきごめん。進路の事で先生に呼ばれちゃた。遅くなるから先帰ってていいよ」
放課後。いつもの如く一緒に帰る約束をしていたが、先生に呼ばれた彩音が申し訳なさそうにやってきた。
「いや、待ってる。図書室で勉強して待ってるから、行ってきなよ」
「そう?じゃあ終わったらすぐ行くから!」
そう送り出してからはや数十分。勉強をするとは言ったものの1人では限界になり、夢のことを思い出していた。
幼稚園ぐらいの時の実際にあった事だ。まるまるとした身体だった事で何かといじられていた所を彩音によく助けられていた。(中学生の今は身長で誤魔化せてはいる)
確かその時から、彩音とは大体一緒にいた。前を走るのを追いかけて、お昼ご飯は隣で食べていた。それだけ彩音の存在が、幼いやまぶきにとっては安心させていたのだ。
それからというもの、2人が仲が良いのをきっかけに母親達も知り合い関係になり今に至る。(やまぶき父だけは不服そうな顔をしていた気もするが)
あの時なんて言ったのか、まず何か言ったかすら覚えていない。むしろ小さい頃の記憶を鮮明に覚えている方が珍しいだろう。しかしあの時から彩音への気持ちは少しずつ、あやふやなものから言葉に出来る程には想いが募っていた。
それでもそれを口に出来ずにいた。単に勇気がない。でも彩音は優しいから。きっと傍にいて欲しいと言ったら、その言葉を守ってくれるんだろうと自意識過剰ながらもやまぶきは思っていた。だからこそ甘えてはいけない。答えがどちらにせよ、言わねばならないと思っている。身体は大きくなっても心は変わらずの小ささだった。
いつものネガティブに走っている事にハッとして首を振る。気分転換にと外で部活動をしている生徒を眺めていれば、ふと視線の端で2人の生徒が立っていた。
メガネ越しに一生懸命見れば、彩音と男子生徒だった。何を話しているかは流石に分からないが、男女2人で話すと言えば大体はそれでは無いか?と頭をよぎる。
ドクドクと心臓が早くなる。だって彩音は可愛いし凄く努力家だから。お転婆だけども楽しそうに笑うのも、沢山食べる所も可愛い。頭がいいのも、やまぶきや他の子に教えるからと勉強をしているから。優しいのだ、こんなやまぶきに対してもずっと。
ずっと言葉に出来なかったものが表に出てこようとする。好きだ。友人としても、1人の女の子としても、人間としても好きなのだ。幼馴染と彩音の言葉に甘えてずっと先延ばしにしていたけれど、さっきの光景を見てから頭から離れなくなった。
好きだ。でも、今のままじゃ、優しさで返させるだけ。相応しいというのは烏滸がましいかもしれないけど、せめて隣に居ても恥じない友人でありたい。変わらなきゃいけない。
「やまぶきごめん、ちょっと長引いちゃって…やまぶき?」
図書室の隅っこで立ち尽くしているやまぶきに声をかける。
「…彩音。俺頑張る」
「うん?えっと、何を??」
「とりあえず痩せる」
「え?そのままでも別にいいと思うけど…とりあえず頑張れ?」
「勉強も頑張る」
「それはうん、頑張ろう!」
「うん!俺頑張る!!」
「頑張るのは良いですけど、図書室ではお静かに」
気合いを入れて、先生に怒られたのは言うまでもない。
それから2年。高校への進学まで筋トレや勉強、習い事を全力でこなし、入れるのに手こずっていたコンタクトにも慣れ、無事に彩音と同じ高校へ進学した。
入学式の日。いつも通り彩音と登校するべく待ち合わせ場所へ行けば、気が付いた彩音は驚きの声を上げる。
「えー!?やまぶきメガネじゃない!!」
「俺の本体メガネだと思われてる!?」
「いや違くて!ちょっと印象違くてびっくりしたって言うか。何何?高校生デビュー?」
「まぁ、えと、うん。そんな感じ」
おぉ…!と歓喜の声が上がる。そりゃ急にメガネを取って、目元も見れなかった前髪切れば印象は変わるだろう。珍しそうな目をしている彩音にコホン、とわざとらしく咳払いをする。
「あの、さ。俺頑張るからさ。見ててくれよな」
「? それくらい別に良いけど…」
「でさ。ちゃんと自信が付いたら、これからも傍に居て欲しいって言うから。待ってて」
「うん。 …うん?」
本人はそういうと頬を叩く。
「よし!早くしないと入学式始まるぞ!行くぞ行くぞ行くぞ!!!!」
「やまぶき、声大きい…!」
「あ、ごめん…すみません…」
周りの子供や大人達に笑われながら、これから始まる高校生活に挑むやまぶきなのであった。
やまぶき→好きな子の為に頑張る子、癖です。彩音ちゃんには安心感や一緒に居て楽しいが強いかも?でも実際告白現場?を見て、彩音ちゃんを取られたくないと思った。これからも一緒にいて欲しいし、笑っている隣に居るのは自分でありたい。仮に友人のままであったとしても彼女に恥じない人間になりたいと自分磨きを始める。
現在のやまぶきはネガティブはまだあるけど、何かと頑張って動こう!の精神は強くなっていると思う。そうした結果が島流しってワケ!!!空回りだね!!!ドンマイ!!!
彩音ちゃん→お借りしました(事後報告)いつもやまぶきのメンケアをありがとう…沢山ご飯食べてね…!沢山食べる君も好き!!!
男子生徒の話は想像に任せます。都合のいいように使って!!