楠家のお正月「ねぇ参拝者に渡すやつどこ?」
「あれねぇ、ちょっと待ってねぇ…よっこいしょ」
「いいよばあちゃん、場所だけ教えて」
ドタバタとあちこちで急ぐ音が聞こえて、お正月の忙しさと家の懐かしさに心地良さを感じる。みんなの声をBGMにこたつでぬくぬくしていると、目の前に剥き終わったみかんが現れる。
「ココちゃんみかん食べるです?」
「食べるです〜!ココくんありがとです!」
同じ髪色の同じ顔の、違うとすれば髪型が1本みつあみの双子の相方から、食べていたみかんの1つを受け取る。この筋まであるのが1番美味しいんですよね〜!
「ん!これ甘いみかんです!どこで買ったんです?」
「あぁ、それよくしてくれてる多田さんが育てたっていうみかんだな〜」
「ユウ兄!うわぁ、もう着てるじゃないですか〜」
「お前らはさっさと着替えろよ〜?こっちはもうてんやわんやなんだぞ」
白と青の袴を身にまとったユウ兄こと悠介お兄ちゃんが、大きな臼を持ちながら居間にひょっこりと顔を出す。よく見ると後ろにいるお父さんは出来たてホヤホヤのけむりを上げているもち米を持っているのが見えた。
「え、お餅!お餅食べれるんです!?」
お餅と言えば、砂糖醤油にきな粉におしるこにお雑煮に…!!考えるだけで口の中がその味を求め、お腹の虫がなる。それを聞いたココくんがまたみかんを口のところに持ってきてくれたのでパクリと1口。
「これは来た人に配るやつ。ココちゃんのじゃないから食べたらダメなやつね」
「え"」
「家の分は家の分で作ってあるから、こっちは諦めて」
「たくさんあるです?」
「沢山ある!」
「やった!!!!」
「ココくん具たくさんが良いです!」
「具も沢山ある!!」
「やった!!!!」
「お、なんか楽しいこと?」
「こんばんは〜」
キャッキャとココくんと喜んでいれば、ユカ姉こと由香里お姉ちゃんともう1人。
「ユカ姉〜!裕樹さんもこんばんはです〜!」
「こんばんはですー!今年もお手伝いありがとうございます!」
「2人ともこんばんは。こちらこそ、毎年呼んでもらってありがとうございます。今回も頑張らせてもらいますね〜♪」
「裕樹ちゃんこんばんは、いつもありがとうな」
「いえいえ、私も美味しい思いをさせて貰ってますから!」
もう数時間でまた1つ年を越える。来年は兎年だから、狛兎のあるここは大変になるだろうな〜なんて思いながらそろそろ準備をするためにと腰をあげる。あ、忙しくなる前に言わないとです!
「今年もお世話になりました。また来年のココちゃんの事も、よろしくお願いしますです!」