2021年12月23日木曜日今日は雲托の様子が変だった。
いつも微妙な笑顔と真顔を繰り返すだけの奴が、今日は見たことの無いような満面の笑みでオレに話しかけてきた。
話しかけるだけならまだ「余程いいことがあった」程度で済んだのだが、夜オレの部屋に連絡もなく突然入ってきたのだからこれは異常だ。あいつは人に用がある時は必ず事前に連絡しているからな。それだけではない。あれだけ他人の身体に無許可で触れることを厳しく咎めていた張本人が、ソファに座っていたオレの元にふらふらと近づいてきて覆い被さるように乗ってきた。もちろん隣には雲托が座れるくらい空間があった。やはり奴は口が裂けんばかりの笑顔でオレを見てきた。桜蘭の事件で頭に血を上らせていた時の奴よりよっぽど恐怖を感じた。
何の用だと問いかけたが、何も答えなかった。ただただオレの胸に顔を埋めて笑っていた。ついに法律のことばかり考えすぎて狂ったかと呆れつつ奴を引きはがそうとしたら、急に笑いが止まって、オレの肩を掴んで勢いよく押された。咄嗟のことで止まることが出来ず、オレは雲托の下に敷かれた。まあ、奴が覆い被さろうがオレに手枷を付けようが難なく退けることは出来るし、今回もそうしようとした。が、今までとち狂ったように笑っていた雲托が今度は泣きだした。何て言っていたかはすすり泣きのせいでほとんど聞き取れなかったが、おそらくオレの名前は呼んでいたと思う。…オレは結局奴にどう反応すればいいか分からなかったが、とりあえず乱れていた奴の髪を手で梳かしてやった。暫くしたらあいつは寝息を立ててオレの上で寝やがった。本当に何がしたかったんだ…。
今はオレのベッドに連れて行って寝かせている。目が覚めた場所がオレの部屋だと気づいた時、あいつはなんて言うだろうな。