うごうご もぞもぞ
歩く気力もありません。ここしばらくの記憶が星空の映像しかない。地面に反射した光が眩しい。今は何時でしょう。
「待って………青団…」
「桂くん……はやく…あはは…」
遠くで子供たちが遊んでいる声が聞こえる。姿は見えないけど、あそんで、いるんですね……。
タッ………タッタッ…タッタッタッ
誰かがこっちに来ている……あ…いけない、こんな、廊下に這いつくばっている姿を子供たちに見せてしまったら…確実にトラウマになってしまいますよね………起きないと………。
「ああ!……須酥!!」
………呼び捨てって事はどうやら子供たちじゃないようですね、よかっ
「龍須酥〜〜っ!!!」
「うっ…」
急に目線が床からとびあがった。外の土の色しか見えていなかった両目が、一気に眩しい太陽を流し込まれて痛がっている。それだけじゃなかった。太陽と、よく晴れた空と……蝶……金色の蝶。
「おい!!龍須酥!お〜〜〜い!!!」
ハッとして前を見る。金色の蝶…の髪飾りを付けた若様。私は彼女に抱きかかえられている。
「若……様……?」
「あはは!また天文台にこもっておかしくなったね?」
「え……あ…また、お世話になってしまいましたか、ふふ……すみません。」
「笑える程度には無理しないで外に出てきたね。偉い、成長してるよ龍須酥。」
「若様より長く生きているはずなのですが…あなたにはかないませんね。」
遠くで聞こえていたはずの笑い声がこちらに引き寄せられたようにこの場に起こった。
「お腹すいたでしょ、ご飯食べよう?」
「はい、ご一緒したいです。」
私の生きる楽しみの中に、星空の他、若様の映像が
加わるようになった。