Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 93

    soseki1_1

    ☆quiet follow

    🤕に失恋する(しない)🔮
    /転生現パロ傭占+オフェ🏈

    「ナワーブな、アイツ好きな人いるらしいぜ」
     グラスの中の氷が傾けられてガラガラ音を鳴らす。
     失恋の音だった。
    「知らなかった?」
     イライ・クラークは沈黙した。それは思案の音でもあったし、悲しみの仕草でもあった。頭は冷静に現実を受け止めようとして、胸の裏側から鳴る鼓動がそれを尽く阻んだ。イライの煩雑とした内情の滲む顔に気づいまのだろう。眼前でビールを傾けた友人ことエリスが、人の良さげな顔の眉尻を下げて、人好きのする顔をしてイライを伺っている。この優しい友人に心配をかけるべきではないのか、はたまた甘えてしまうべきか。イライはたっぷり数秒悩んで前者を取った。帰来の善良さと、恋の独善が生んだ判断だった。赤い血の滴るこの傷を誰にも触られたくなかった。
    「皆知らないんじゃないかな。あまりそういう話は聞かない人だから」
     だから期待した。安心していた。時折少しだけ見つめては心を満たした。兵役を経た無骨な手の指先に見惚れて、森のように静かで美しい瞳に息を呑んだ。それら全てを内密に、それでいて踊るような心地で行った。楽しく、嬉しく、悲しく、落ち着かない、めくるめく素晴らしい日々。それが悲しさに塗れるなんて想像もしなかった。
     大好きだった。
     今も大好きなのに。
    「どんな人?」
     グラスを傾ける。カルーアミルクを失恋の味にしながら無理やり微笑む。
    「知りたいな」
     微笑みはさておき、出した言葉は事実だ。彼の好きな人を、自分の恋の日々を刺殺した相手を知りたいと思った。まるで仇を知りたがる無謀な願いだ。同時に、ひっきりなしに動悸する鼓動は知りたくないと叫んでいた。もう何も知りたくない。あの盗み見ていた目がどんな風に笑うのか、触れるときにはどんな指付きをするのか、眠るときに足は絡ませるのか、それとも抱き寄せるのか。キスをするときの顔は。どんなキスをするの? 全部が知りたかった。でも今は、もう何も知りたくない。
    「それがなぁ」骨でも噛んだのだろうか。片眉を歪めてエリスは言う「わかんなくて」
    「わからない?」
     イライも同じように眉を歪める。血を流す心を更に串刺しにするイライの目論見は外れ、曖昧な答えばかりが残されている。聞き返す言葉に、エリスはビールのジョッキを重々しくゴトリと置いて続けた。
    「好きな奴がいるってだけ教えてもらったんだ。前に。でもどんな人なのかって聞くとはぐらかされてよ」
     なにそれ。どうして。イライは、そういった言葉を紡ごうとした。しかし募りきった感情が喉を塞ぎ、呼吸を薄くしていた為に声なんて出せたものではなかった。指が震えるのを誤魔化すためにグラスを傾ける。まろやかな甘さが舌に乗る。
    「でも心底好きだって笑ってたんだよなぁ」
     ごつ。と、硝子のグラスが机に落っこちるように置かれたことに、それが自分の手による音であることに、全てに気付けなかった。唇を噛みしめる代わりに声を閉ざし、目を瞑り切る代わりそっと伏せる。瞬くと、酷く熱い目の奥から涙なんてものが零れ落ちそうで、イライは何も出来なかった。ただ黙る他なかった。これじゃあ恨むことも目指すことも出来ない。夢見ることすら許されない。
     味蕾に残る味がただただ何度も口の中で反響している。
     カルーアミルクなんて頼まなければよかった。
     ずっと痛いのに、ずっと甘いままだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤💖💖💖👏👏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
    877

    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
    1556

    recommended works