「いい子だ、イライ」
ちゃんとわかっている。そう言うように、ナワーブは睦言を囁く。そして唇から離れたその口を胸部へと辿り着かせる。白肌を晒す穴から免れ、ニット素材の下で暖まる胸の頂を、ナワーブはそのままにしておいた。穴をずらし、些か無理矢理にその粒を晒すことはせず、ニットの上へと唇を宛がう。布越しに唇を押し付けることを幾らか繰り返す。先程よりも焦れったい愛撫に、イライは寂しがり屋な唇を薄く開いては閉じさせて、切なそうに眉尻を下げる。その様を視線だけで見て取りながら、ナワーブは衣服へと唇を押し当てた。この生地が見た目より随分薄いことは、手を潜り込ませて、そして幾らかキスをして確かめた。ならばナワーブが目論みは正しく果たせるはずだ。
「っ、ぁ♡ァ♡っ、んぅ、…!♡」
押し当てた唇の下には、愛されたがる胸の頂がある。それは存外薄い布越しに把握していた。ナワーブは唇を押し当てたまま薄く開き、舌を出す。そしてねっとりと舐め上げる。ニットのざらりとした不快な感触が舌背を撫でる。けれど、それを繰り返していく内、薄い生地が唾液で塗れ、少なからず肌に張り付く。そして、その下にある愛らしい粒が、濡れた布地をつんと押し上げる。
「ぁ……っ♡ぁ、ぅ…♡…っ♡は…ぁぁ…♡」
よく見つめていなければ解らない……しかし見つめていれば解る程度に自信を主張する胸の粒を、ナワーブは服越しに愛で続ける。舐り、唇で食んで、時に歯で噛み付く。存外薄いとはいえ、ニット素材の服越しだ。酷くもどかしいのだろう。イライは僅かに身じろぎ、胸を突き出すようにくねらせて、ついには枕を掴んでいた手を離してナワーブの頭部へとやった。ひとつに結えられた髪をそろりと解き、撫で付けるように……それよりは随分と余裕なく髪に指を潜らせて、指先で頸を掻く。髪越しとはいえ、細指に急所を触れられている感覚に背筋をぞわぞわと…存外心地よく粟立たせながら、ナワーブはそれでも口を止めなかった。
「なわ、ぶ……っ♡ぁ…ぁ…っ♡…っ♡くす、ぐ…っ、たぃ…♡」
「ん……ああ、悪いことをした」
「ァっ♡♡っ、ぁ♡ぁぁ…っ♡」
イライが零した言葉が、本心の全てを伝えていないとは、ナワーブは無論理解していた。けれど自身に縋るような指先が、その声が愛らしくてならず、ナワーブは口を離すと、布越しのままの頂を指先で掻く。くにくにくに…♡と、布の摩擦でほんの少し強く擦られる快感に、イライは堪らなそうに、そして切なげな顔をして声を上げた。いっそ泣きたそうな目がナワーブへと注がれる。
「ちが、ぁ…♡ちがう、の…♡っ…♡おっぱい、ちょく、せつ…っ♡」
「……そうしたいのは山々なんだがな」
ナワーブは言いながら、爪先で乳首を捉え、くにぃ…♡と押し潰すようにしながら、ゆっくりと捏ね回してやる。先ほどより強いものの望んだ苛烈さには及ばない快楽に、そして渇望が叶う気配に、イライはいっとう堪らなそうな声をあげる。ナワーブは少し顔を上げて、注がれる瞳と目を合わせた。愛おしい美しい目を前に碧眼を細めて、思う。縋るような眼差しを見ると、ほんの少しだけ悪戯がしたくなるのだ。
「折角用意した服だ。脱がせるのは勿体無いだろう」
「そんな、ぁ…っ♡っ、ぁ♡ぁー…♡♡」
青い瞳は揺らめいて、視線だけでも十分に乞い強請う。そのいじましく、愛おしい様を、ナワーブはじっと見つめていた。